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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 109

(あー、これはひどいな)
ルミエールとルシアが外の廊下で激闘を続けているあいだに、アベコウキは牢部屋の中でオーリッサの都の人間をゾンビ化させている原因を前に頭をかいていた。
牢部屋の体感温度が肌に鳥肌が立つほど下がっていて、廊下より薄暗い。
廊下の牢の外からは、ルシアが見たときは牢屋の中は黒い霧がかかっているように見えた。アベコウキらしい人影がしゃがんで床に両手の手のひらをつけて、呪文らしきものを唱えているのも見えた。
(アベコウキ、早くなんとかしやがれ!)
ルシアが牢部屋の前から通りすぎて、ルミエールが作り出した人肉の壁を睨みつけた。
オーリッサの都とその周辺が魔法陣の現在の結界化の範囲で、そこでゾンビ化した人間のHPとMPを魔法陣の中に吸収して保存している。
ゾンビが遺体になっても結界内を動きまわっているのは、魔法陣の中にまとめて命が保存されて、さらに吸収する目的で活動させられているのである。
それがなぜ生きている人間や仲間の血肉を喰うという行動になんでつながるのかは、アベコウキにもわからなかったが、魔法陣が人間のHPとMPを集めるのを停止させればゾンビの群れも停止する。
呪術師の弟子マトゥがライラを召喚してしまったとき、取り込まれた命の中に女神の命のかけらが含まれてしまったので、魔法陣の中に蓄積された村で実験に使われた女性たちのHPとMP、つまり生気と融合してライラが生成された。
ライラが人間から生気を奪取する能力は、魔法陣が犠牲者の生気を蓄積することに関連性がある。
アベコウキは蓄積された生気を全て、アイテム化してしまうことにした。HPとMPの結晶、それは別名で賢者の石と呼ばれている。
魔法陣を単純に靴底でこすったりして部分的に消してしまっていたら、蓄積されたHPとMPが大爆発したら、ゾンビの群れと一緒に三人とも砕けた肉片として吹き飛ぶところであった。
「終わったのか……」
ルミエールが通路のゾンビの群れが停止したのを見つめてつぶやいた。
ルシアも疲労困憊の状態で、通路の壁にもたれるとその場で座りこんだ。
牢部屋の黒い霧が魔法陣に吸い込まれ、異様な温度変化を感じなくなった。アベコウキが小粒の真っ赤に輝く賢者の石の粒をそっと両手ですくって、小袋の中にしまいこむ。
「大丈夫、かじられてない?」
アベコウキが、ルミエールとルシアのそばに行って声をかけた。
牢部屋の床に残されている魔法陣の中心に、小袋から取り出した賢者の石を一粒アベコウキは置いた。
小粒の賢者の石がキラキラと輝き砕け散って消滅したとき、三人の姿は牢部屋の中から消えていた。
後日、神聖教団の僧侶たちと騎士に率いられた三百人の兵士、そのうしろから商業ギルドの首領イラベラの大きめで装飾の派手な馬車と手下たちの荷馬車が真昼にオーリッサの都へ到着した。
生存者なし。無残に損傷した遺体多数。
イラベラは、オーリッサの都にある銀行の建物に、おびえる手下たちを向かわせて、建物内に残されている金品を回収させた。
イラベラはまだ騒ぎが起きているようなら、僧侶たちや騎士や兵士たちを見捨てて、すぐに王都へ逃げ帰るつもりだった。
(何があったかわからないけど、金を置いていくわけにはいかないねぇ)
王都の記録ではオーリッサの都で疫病が発生し、多数の犠牲者が出た。その犠牲者のなかに、西公主ダルア公とその親族がいたことが残されている。

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