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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 11

「よろしければ、またいつでもお越し下さい」
バレンドルフの妻マノンが僧侶メトラと兵士見習いアルベルに何度も頭を下げて店の外まで見送ってくれた。
酒場での謎の少年の目撃情報はなし。
「では、宿屋に行ってみましょうか」
二人が夕暮れどきの開店前の酒場から、宿屋のある地区へ向かった。
評議会メンバーの主婦マリーナ。
すでに議席を得てから五年が経過している。現在は二十八歳で子供はいない。夫は旅商人で、荷馬車で各地をめぐり仕入れたものを、別の地域で商人に売り、儲けを出して半年に一度帰ってくる。
謎の少年が治療を終えたあと、行くあてもないと聞いて、あきれながら家に保護していた。
少年がたまたま通りかかったところで、賭博場拉致監禁事件の被害者の家族が教会から来た僧侶様だと思い込んで家に案内した。
少年が一人をあっさり治療したので、他の被害者の家へ案内して全員治療することになったらしい。
少年が最後の女性を治療したところでマリーナがやってきた。マリーナは日頃から事件被害者の家族の相談や愚痴を聞いていたからである。
少年がなぜ僧侶の服を着ているのか。
他の街で教会に泊めてもらったときに、服や食糧をめぐんでもらったということらしいとわかった。
各地の教会をめぐる巡礼者の旅人に、教会は食事や宿泊できる部屋を提供したりもしている。
アベコウキという名前らしい。
エード族のような黒髪。
カルーム族でもアルタ族でもない黒い瞳。
肌は白というより淡い黄色。
(きっとキジム族の血統の子なんだわ)
マリーナは、僧侶メトラのように博学ではない。夫からいろんな民族の人がいるとは聞いて、自分ではかなり詳しいと思っている。
もちろん魔界と呼ばれる異界があることなど知らない。だから、魔界の者が人の生気を奪うという古い伝承も知らない。
「で、コウくんはどこから来たのかな?」
「日本の埼玉県」
「ニホンノサイタマケン、と」
マリーナは話を聞いてメモを取っていた。
(どこかしら。でも、すごい長い名前の街だってあるわよね)
「どうやってみんなの病気を治したの?」
被害者の家族たちからは治療しても、発作を抑えるだけで、自分の名前も家族のこともわからなくなったままだとマリーナは聞かされていた。
「ステータス異常はアブラーンの呪文ですぐになおるけど」
「ステータス?」
「うん」
マリーナが小首をかしげて、少年の顔をまじまじと見つめた。
(またわからない言葉が出てきたわ)
「コウくん、おなかすいてない?」
「ぺこぺこだよ」
「じゃあ、何かつくるから、ちょっと待ってて」
「うん、ありかとう」
そう言うと謎の少年アベコウキは、ソファーに背中をあずけて目を閉じると、疲れていたのかすぅすぅと寝息を立て始めた。
(あ、なんか、かわいい)
料理の途中で静かなので、ちらっとのぞきにきてマリーナは少年の寝顔が女の子みたいだと思った。
「ごはんにしましょ」
「ん……あれ、僕、寝ちゃってた?」
「疲れてたのね」
「まあ、いいか。MPは回復してるし」
「え、なに、エムピー?」
「これ、おいしそうだね、すごい!」
「でしょ?」
マリーナがにっこりと笑って少年の皿に料理を取り分けてのせた。
「さあ、めしあがれ」
「いただきまーす」

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