病院に閉じ込められて 10
「そうなのかな…」
「とりあえず行ってみましょう」
優子ちゃん…妙に乗り気になっているなぁ…
「仕方ない行くか」
この娘言い出したら聞かない気があるようだ。
「じゃあ開けますね!」
優子ちゃんが嬉々として扉を開ける。
「あ、ちょっと待った!」
「どうしたんですか?高橋先生」
「あの、向こうに人がいるかも知れない。やっぱり、服着ていった方がいいかなあ、とちょっと思って」
そう口に出すと、実際に恥ずかしい思いが頭をもたげてきた。僕は方向指示器となっているモノを、隠しきれないがそっと手で覆う動作をした。
「先生、それって、単なる現代の地球の人類の常識でしょう」
「へっ?!」
「なんかこれって、SF入ってるような気がしません?例えば、向こうにいるのが宇宙人だったら、服を着てないのがデフォ」
「そんなこと分かるのかよ」
「宇宙人の絵って、服を着てないの多くありません?」
「うーん、確かに、そうかもだけどそれはフィクションで」
「パイオニアだかボイジャーだかにも裸の男女の絵が搭載されましたよね」
「そりゃ知ってるけど」
「じゃあ、レッツゴー!」
優子ちゃんは全裸のまま胸を張って扉をくぐっていった。
何だか凄い理屈で言いくるめられた気もするけど;…
まあ女の優子ちゃんが裸でああも堂々としているのだから、男の僕としてはそれに従うしかない…
ある意味、女は強し…ってことかな…?
「さあ早くぅ…道標が無いと迷っちゃいますよ〜」
全く;…優子ちゃんにとって僕のコレはすっかり方向支持器って訳かよ;…
これじゃあ服を着たところで、優子ちゃんはココだけ出せって言うに決まっている…
1番隠したいところを晒け出さなきゃいけないのなら、服を着る意味も無いってことだな;…
扉の向こうは、同じ光沢の通路が続いた。ところどころに扉や曲がり角があるが、文字や絵のようなものはなく、まして何かに会うわけでもなく、僕たちは進んだ。
時々、方向指示器が反応して曲がり角での行くべき方向を示す。それに従っていくつかの角を曲がっていく。
そして、ソレは、一つの扉の前で、その中の方をまっすぐに指し示した。
“いよいよ、ここに何かあるような気がする”
僕はつばを飲み込んだ。どちらからともなく、僕と優子ちゃんは互いに手を握った。
そして、二人並んで扉の前に進み出ると、音もなく扉は自動的に開いた。
中には、手術台のようなものが置かれていた。