病院に閉じ込められて 14
「なあ…ええと、息子」
「僕のこと?」
「ああ、なんて、呼んだらいい?」
「あの、僕も、こっちの妹も、名前は与えられていないんだよ」
「いい名前、つけてほしいな」
「妹」と示された女の子がにっこり笑ってそう言った。
こういうのは一人で決めたらまずいな…
僕は隅に優子ちゃんを呼び、この子らの名前を話し合って「すすむ」「ゆき」と決め、彼らに伝えた。
彼らは大いに喜んで、互いに何回も「ゆき」「すすむ」と呼び合い続けた。
名前がきまったところで、僕はすすむにもう少し話を聞いてみた。
僕たちが寝ている間、彼らは彼らなりの時間軸を生きてきたようだ。そこで、生きるのに必要なことや、寝ている人が父と母であることなどを習った…
「教えたのは、その、どんな人だった、または人ではなかった?」
「説明できるような外見がなくって」
外見が無い?…それってやっぱり、優子ちゃんが言っていたように宇宙人みたいなもんだったりするんだろうか?…
今まで目で見た物しか信じられなかった現実主義の心が揺らぐ…
「声とかは聞こえてくるんだろう?…」
「ううん…そう言うんじゃないんです…直接、心に聞こえてくるような…『ペニスを扱いてごらん…』みたいなことが聞こえてくるんですよね…」
すすむのペニスはその時のことを思い出したのかむくむくと立ち上がり、剥け始めた。
「男の子用だとそういうこと言われたんだ」
今まで聞いている立場だったゆきが口を開いた。
「女の子用だとどうなの?やっぱり、ま…」
「その言い方だめ!ヴァギナ、とか、クリトリス、とか言って!」
宇宙人?は、ずいぶん広範な知識を教え込んだものだ…基本的に僕たちからスキャンした知識ばかりだろうからあまり文句は言えないが…
「女の子のほうだと、ヴァギナからだいたい月1回血が出るようになる日がくる、って」
「もうきたの?」
「まだ。すすむは、さっきの、ペニスを扱く、で、精通したんでしょ」
「…ああ、あのとき見てたんだ。ああ、そうだよ」
まあ、すすむはちゃんと陰毛も生え揃っているし、そういうことが来ても可笑しくは無い年頃だな…
「それは大人になった証拠だから、めでたいことではあるんだぞ…」
自分の時はお袋が赤飯なんて炊いてくれて、ちょっと気恥ずかしい思いをしたんだったっけかな…
そんなお袋も、今僕がいる世界には存在してはいないのだろう…
それを思うと、こんな孫の顔を見せてやりたかったけどな…
「へぇ〜ピュピュっとあれが出ることが、おめでたいことなんですか?…」
「ああ、あれは大人にならなきゃ出ないもんだからな…」