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ゼロから始める夫婦生活
官能リレー小説 - その他

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ゼロから始める夫婦生活 7

 人波に押されて出口を出る。
 この施設、いろいろなものが複合していて、俺と唯は旅行会社の前を通った。
 「あの映画の、あの子が住んでいた町のモデルって、こっちの方なんだって」
 あの映画を見たあとなので、ふたりとも、その舞台の一つの山里のほうのパンフレットに視線を吸い寄せられていた。
「秋には大きなお祭りがあるらしいし、温泉もいいみたいだから行ってみるかい?」
「・・・いいんですか?」

俺は旅行は嫌いでない。
だから前の会社で海外赴任も割と楽しみで行っていたぐらいだ。
ただ、辞める前に行った海外の赴任先は所謂途上国で、英語も通じなくてかなり苦労したが・・・

「まぁちょっとしたプレ新婚旅行って事だな」
「ふふ・・・そう言うのいいですね」

唯が満更でもなく微笑む。
こうやって少しずつ関係を築いていけたらいいんだと思うし、これが公平では無い俺のやり方だろう。

「さあ、ちょっとぶらぶらしてご飯でもしようか」
「はいっ!」

俺が手を差し出すと、唯が握り返してくる。
まるで中高生のカップルだなと思いながら、俺達はモールの中で散策に出掛けたのだった。

食事時に唯が選んだ店はファーストフード店だった。

「こんなものでいいのかい?」
「はいっ!、公平さんはこんなの嫌いでしたが・・・私っ、一回入ってみたかったんです!」

元々社長令嬢だし公平がファーストフードなんて非効率な食い物って言ってたぐらいだから逆に興味あるのだろう。
キラキラした目でメニューを見てる様子が何か面白かった。
それに、こうしてる方がデートぽくていい。
本当に中高生のデートだなぁと自分でも苦笑レベルだが。

「これおいしいです!」
「そっかぁ、俺もたまに食べると美味いと思うな」

ジャンクフード系は下流の貧乏人の食い物とも言えるが、俺はそもそもそっち系なので問題ない。
毎日食いたいとは思わないがたまにはこんなのもいいかな。

「今日は楽しいです・・・デートっていいものですね・・・」
「楽しんでくれたなら良かったよ」

こう言う普通の恋愛をすっ飛ばして公平と婚約したんだろう。
彼女の立場や責任だとそう言う選択肢しかなかったのかもしれないし、今俺と結婚したのもそうだろう。

でも、俺はそういうのは嫌だ。
例え立場や責任だとしても、結婚した以上は好きになりたいし愛し合いたい。
唯の美味しそうに食べる様子を見ながら俺はそんな事を考えていたのだ。

その後、時間をたっぷり使ってウインドショピング。
やはり女の子だけあって、買わずとも見て回るのは好きなんだろう。
男は大概これが苦痛な奴が多いのだが、可愛い子が楽しそうにしてるのを見るのが嫌とか勿体無いと思う。
特にファッションとかに詳しくないが、彼女が服を選んで似合うかどうかとかより、そんな時間を共有するほうが楽しいと思うのだが・・・

まぁ、モテない俺はそれを実践する機会は殆どなかった。
学生時代、綾瀬達3人の買い物とかに付き合う事があるぐらいで、デートらしいのはこれがほぼ初めてだ。

そんな風に楽しみながら夕方まで過ごした俺達は車で帰途につく。

「直哉さん・・・」
「ん?、どうしたの?」

夕暮れの車窓を見ながら唯が俺を呼ぶ。

「直哉さんの事、信用できるいい人と思ってます」
「うん・・・」
「でも、まだ好きかどうかは分かりません・・・勿論、妻としての勤めが嫌な訳ではないし、身体を求められれば応じる覚悟もあります・・・」

正直な言葉だ。
まぁ、正直に話せるぐらいには信用してくれたって事だろう。

「妻としての勤めとかセックスしなきゃとか、そんなの忘れて」
「え?・・・」
「俺は唯を好きになりたいし、愛し合いたい・・・だから義務とか立場とかそんなので夫婦したくない」

そう俺が言うと、唯は黙って車窓を見続けた。
窓に反射する唯の表情は横を見れば覗えるだろうが、俺はただ正面を見ながら車を走らせ続けた。

「公平さんは・・・ただついていき、従うだけでよかった・・・」

それはそうだろう。
アイツはそうするに足りる男だし、黙って従ってれば間違いはないだろう。

「そんな事求められてこなかったから、よくわかりません・・・」

公平じゃなくても、多分唯は社長令嬢として見合い結婚してただろう。
そう育てられてきたから、初対面の俺と結婚とかできたんだろう。

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