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ゼロから始める夫婦生活
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ゼロから始める夫婦生活 6

 一応、時間調べておいたので、その映画は間もなく始まる。公開からもうだいぶ経ったが、さすがの人気作。結構賑わっていた。
 俺と唯は、ポップコーンと飲み物とともに席に向かう。
 もう、いくつかの作品の予告編が流れている。
 「興味あるジャンルとかはある?」
「これといって、特にはないかなぁ。映画見るのも久しぶりなので」
「アニメは見るの?」
「昔はよく見たけど…今は有名な制作会社の映画のがテレビでやってるときくらいで…」

ちょっと残念だけど、公平と付き合っていたらな。
高校時代はサッカー部で、特に仲の良かった奴が大のアニメオタクで一緒に見たり話をしたものだ。
公平はそこにはあまり参加しないで一人でスパイクの手入れとかしてたもんな。

因みに秘書室長の飯野紗英も結構なオタクで、俺とはそっち系の話ができる貴重な相手だった。
そんな事を思い出しながら中に入る。
流石に盛況と言うだけあって人は多めだったが、俺はこの映画場の売りであるカップルシートに唯と共に座る。
二人掛けのカップルシートは割高なのだが、やはりと言うか他の席もカップルで埋まっていた。

「こんな席あるんですね」
「ああ、デートだしこう言うのもありかなと・・・最も、俺も利用した事ほぼ無いけどね」

実は高校時代の十数年前に一度だけ使った。
相手は副社長してる綾瀬優香だった。
実は綾瀬は公平と行く予定だったんだけど、公平が結局行きたくないらしく俺に『代わりに行ってくれ』と振られたのだった。
当時、公平と綾瀬なら似合いのカップルだと思ってたし、綾瀬も楽しみにしてるだろうから気が引けたが、以外なぐらい綾瀬が気を使ってくれたのを覚えている。
俺もかなり気を使ったから、互いに最後は謝罪合戦のようになってしまったから、映画の内容は正直頭に残らなかった。

うすらぼんやり当時の会話が思い出されてきた。

「ごめんな・・・公平と行く予定なのに俺が代わりで」
「こちらこそごめんなさい・・・公平くんが浅野くんに行って貰えって言うから、これでも喜んでるのよ」

まぁ、喜んでると言いつつ俺の為に来たとは思ってなかったから別にいい。
ドタキャンしたのは公平なのに、綾瀬は公平が悪いとか言う事は無かった。
確かに似合いのカップルに見えたけど、綾瀬が公平に全てを合わせて尽くし、公平がそれを当然のように受け取ってるって図式だった気がする。

まぁ、公平はそうされて当然と言うような雰囲気が当時からあった。
綾瀬だけでなく赤江や飯野も、まるで公平に仕えるメイドのようでもあったし、そんな関係なのに公平の側にいれるってだけでやっかみも受けていたような気がする。
公平の作った会社に3人がいた時も納得してた俺がいたし、恐らく他所で就職してた3人は公平に誘われて喜んで辞めてきたんだろうと想像できた。

公平が背中を見せて俺について来い、というタイプの人間なのは昔を想像したって明らかだし、それを否定するつもりは全くない。それを慕う人間が現にいたからだ。

でも、俺に公平の真似をしろと言われても正直言って無理。
俺にはそこまでのカリスマ性は持ち合わせてないし来たばかりの雇われ社長みたいなのに人を動かす力は誰だって期待してないだろう。
俺は少しずつ、色々学びながら綾瀬や赤江や飯野と一緒に会社を盛り立てていく。それでいいんだろう。


いろいろ考えてる間に目的の映画が始まる。
いい作品だった。さすが大ヒットするだけのことはある。

「すごくよかったです!」
唯も満足したみたいだ。
笑顔でごまかしているが、頬に涙の跡が見えるしちょっと目が赤い。

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