ゼロから始める夫婦生活 32
「仕事と家事とどっちをとるって聞かれたら?」
「私は娘とゆっくり暮らしたいなって。でも紗英や美奈がいるし、何より公平くんがそれを認めようとしなかった、それもあって」
公平の言葉が絶対だからだろう。
それに優香のような優秀な人材を失うと大きな痛手だ。
「香帆ちゃんはきっといい子に育つな」
「普段は男の子相手でも引っ張っていく感じなのに、大人の男を見慣れてないから申し訳ない姿を見せちゃったわね」
「構わないさ…昔から親戚の子供にはよく大泣きされてたしそれに比べたら」
ある意味三人の牝奴隷を繋ぎ止めておくほうが難しいかもしれない。
他の社員は出世や金でなびくが、彼女達は自身の性欲と娘との関係を重視する。いずれ唯も孕むことになるし、牝奴隷までは行かなくてもより親密で忠誠心のある部下が必要だ。
きっと、公平も三人が臨月のときとかは大変だったに違いない。
「ところで、休日出勤してる部署ってあるか?」
「遺憾ながら、あるようです」
「とはいっても、実際に見に行ったことは…」
「休みの日は、娘の世話を…」
「そうか、聞いてみただけだ」
ある日職場で質問をぶつけてみると、些細なことという反応だった。俺は改めて女の限界のようなものを見た思いであったが、あえて追求しない。優秀な彼女達でさえ視野の狭い部分もあるを知っただけでも収穫だ。
まだ俺にはコンサルだった頃の意識が残っているようで、早速アポ無しで休日の職場に顔をだすことにした。
その部署は、元々唯の父親がやっていた仕事の部門。
部長は元部下だったようだ。
言わば今の会社の源流とも言える場所だが、採算性から言うともうその役目は終えていた。
つまり、忘れ去られた部署だ。
丁度、取引会社同士の昼食会がその日にあり、唯と共に出かけた後に寄ってみる。
あくまでもついでを装う為だ。
昼食会だから俺はフォーマルなスーツ、唯は着物姿。
髪を結い着物を着ると、唯はやはり品のある奥様に見えた。
「会社訪問とかしたことあるかい?」
「はい、公平さんに連れられて・・・」
あまりいい顔じゃなかった。
何となく想像できたけど聞いてみる。
「なにかあったのかい?」
「公平さんには、露出の多い格好で連れて行かれました・・・小さい頃からの知り合いも多くて恥ずかしかったです・・・」
そう言う事か・・・
アイツ、凄くオス的な所があったから、俺の女だと見せびらかしたかったんだろう。
まぁ、唯に露出の多い服は似合うだろう。
身体だけ見れば・・・
だけど、そう言うのって野暮だと思うんだよなぁ・・・
俺的にはやりたくない。
俺と唯がその部署に行くと、休日なのに忙しそうにしていた。
そこの部長・・・50代の真面目そうな部長が俺を見て慌てた表情になる。
「社長?!、それに奥様もっ?!!」
「休日なのに仕事させてすまないね・・・会食の帰りに寄らせて貰ったよ」
「ご無沙汰してます」
唯が頭を下げると、部長以下全員和んだような表情になる。
俺はそれを見ながら、手に持っていた差し入れの軽食とコーヒーの袋を若い社員に渡す。
「いや、頑張ってくれて本当に助かるよ」
「社長っ!、有難うございますっ!!・・・みんな差し入れ貰ったよ!」
笑顔になる部署。
俺に近づいた部長がホッとした表情で言う。
「初めは納得いかなかったんですが・・・奥様を大事にしてくれてるようで安心しました・・・」
「うん、これだけ尽くしてくれたら大事にしないとバチが当たるよ」
知り合いの元社員達に囲まれて和やかに笑う唯を見ながら俺はそう言う。
唯を連れてきて正解だったようだ。
圧倒的なカリスマを持つ公平と違い、俺にとって唯はこの会社に居れる正当性みたいなものだ。
支えてくれる優秀な優香達3人がいるのもあるが、唯の夫だから社長になれてる的な部分も当然ある。
唯からこの部長が実直で人望あると聞いてたから、味方になってくれると有り難いとは思ってた。
なので好感触なのはラッキーだった。
「休日返上でやらねばならないぐらい追い込まれてるのかい?」
「はい、営業の納期設定がシビアなのです・・・」
「そうか・・・少し人員を増やせばいいのかい?」
「はい、そうなのですが・・・花形部署でないここに来たがる人員がいないようで・・・」
人事に関しては美奈が中心で決めていると言っていた。
まぁ採算性が多くない部署だから人員が削られているのだろうけど、納期を伸ばすか人員を増やすかしないと休みも取れないだろう。
「でも、奥様の様子を見て安心したので、もう一頑張りできそうですな」
「すまないね・・・まだ会社を把握しきれてなくて」
「いえ、みんな先代よりノビノビと仕事できてますよ・・・おっと!、これはご内密に」