(続)格好が・・・ 12
「はぁるか!」
後ろから呼び声がし、遥は振り向く。
「泉!それに長瀬くん…」
そこには泉と、サッカー部のユニフォーム姿の修が並んで立っていた。
「2人共…サッカー部の公開練習はどうしたのよ?」
遥が尋ねると、
「いやあ、雪乃先輩が演技を始めるって聞いたら、みんなが見たいって言って…」
修が照れながら言った。
「それでもって…練習は中断ってわけなの」
泉はそう言うと、体育館の入口の方へ顔を向けた。
ユニフォーム姿のサッカー部員たちが入口付近に固まっていた。
音楽が流れ始める。
雪乃の体の一部であるかのように雪乃の意思通りに動くリボン。雪乃は何回も回転し、側転し、しなやかに180度以上に脚を開き、そしてリボンから手を離してもやはえい雪乃の意思通り、リボンは確実に手に戻ってくる。
一同、しんとして演技を見守る。
一分三十秒のリボンの演技のフィニッシュ。割れんばかりの拍手に軽く答えて、雪乃は一分以内にフープを持って戻ってきた。
フープもこれまでの演者とは一味違った。
180度以上開く雪乃の脚。その脚から脚へ、そして腕から腕へ、フープはくるくると、雪乃の意のままに回っていく。
そしてフープを高く投げ上げ、何回も前転しても、リボンと同じように、確実に雪乃の手にそれは当然のように戻って来るのだった。
その後のこん棒、ロープ、ボールも、雪乃は一つも観客の首をひねらせることはなく、退出して数十秒で持ち替えて出てきて、そしてそれぞれ一分三十秒の演技を繰り広げた。
雪乃は、最後に雪乃の一部になったボールを高々と掲げて、音楽が鳴りやんだ。
観客は一斉に割れんばかりの拍手を送る。
かなりの運動量だったが、雪乃は息が上がったふうは全く見せなかった。
静止する雪乃にスポットライトが当たり続ける。
卒業に当たっての雪乃のメッセージが、これから聞けるのだ。
体育館のステージにあるスクリーンに、何人かの女子が映った写真が映し出された。
「これは、私が白光に入学したばかりの頃の写真です…あり得ないくらい、スカート長いでしょう」
観衆一同、同意の方向の声を上げた。
「あれから3年、それは短いようで、とっても長い、3年間だったわけです…」