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不思議なノート
官能リレー小説 - その他

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不思議なノート 20

気分転換に一人の外出。
誰かと一緒もいいけど、時にはこういう時間だって大事だ。
最近ご無沙汰のゲームや漫画も物色しながら、店数件をはしごする。
(何かあったときのために、一応ノートは持ち歩いている)

「お…そうだ」
ノートをもらって以来、ばあちゃんに会ってないな。
ちょっと顔見せにでも行くか。


「久しぶりじゃね、坊ちゃん」
「うん、久しぶり」

ばあちゃんは相変わらず元気だ。
まあこの歳でこれだけシャキシャキ動ける年寄りなんてそうはいないだろう。

「坊ちゃん、時間はあるかい?」
「ああ、まあ」

ならばとばあちゃん、客も来ないのをいいことに俺を奥の居住スペースに上がらせる。
ありがたいことにお茶とお菓子までいただいて。

「ばあちゃんは、ずっと一人なのか?」
「まあ、今はそれに近いかもな」

聞くに、ばあちゃんの旦那さんは数年前に亡くなったそうだ。
それ以来この店はばあちゃんが一人で切り盛りするようになったという。
たまに、娘さんやお孫さんが様子を見にやってくるらしい。いい関係なんだろう。


…ふと、テレビの横にある写真立てが気になった。
ばあちゃんと、隣にいるのはショートカットの可愛らしい女の子。
年齢的には俺と同じくらいだろうか。

「ばあちゃん、あの写真は?」
「ああ、わしのお気に入りじゃよ」
「あの子は?」
「孫娘じゃよ…今から17年前の写真でな」

へぇ…可愛い子だ。きっとばあちゃんも若い頃は美人だったんだろうな…

「この子は、今…」
「今…おったらなぁ」
ええっ?

「この写真を撮った1週間後だった…交通事故で、な…まだ19だった…しかも、このとき、この子はお腹に赤ちゃんもいたんじゃよ…」
「ま、マジかよ…」

…もし、この人が生きていたら、俺と同い年のひ孫がいることになる。
写真を見るばあちゃん、その目は悲しげだった。

俺はふと、ノートの入ったカバンを見やった。

…なあ、お前は、死んだ人を蘇らすことって、出来るのか?

 「あの…ばあちゃん、その、お孫さんの、お名前…聞いても、いいか?」
 「小野 真里。まこと、に、さと、の、真里じゃ」

 俺は、見えないように、後ろを向いて、ノートに書く。
  
 「西暦1998年 3月31日、小野 真里は、一日中、この文房具店に、いた」
 

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