そして、少女は復讐する 70
ヘタレとケダモノ両方の性質を併せ持つ。
それが長坂悠馬という男である。
「普段だってこっちから誘わないとシテくれないんだから」
「そ、それは…」
里菜の言葉に悠馬はさらに顔を赤くする。
「その方が良いんじゃないかな?うちの人はそういうところ全然ないし」
由佳里が言う。
うちの人=もちろん鉄也のことだ。
そんな会話をしながら話題はクリスマスに。
もう数日後の話だ。
健二は美香と家族と過ごす。
因みに健二の家族とやらは誰も知らないらしい。
夏菜、歩、小夜子、それに鋼太郎、大輝、陽介・・・
この中学生6人は、このメンバーでパーティーらしい。
そして敦と一希は椎名家主催のパーティーに一緒に出席。
そこで2人の婚約発表となるらしいのだ。
「いよいよ敦くんと一希ちゃんの婚約かぁ・・・いいのかなぁそれで・・・」
「いいも悪いも、あの2人の立場だったら仕方ないッスよ」
納得いかないような顔の悠馬に暁美がそう言う。
旧華族だと言う椎名家と須藤家。
しかもどちらも資産家同士。
当然とも言える組み合わせだし、彼らの結婚とかは家同士の付き合いと言う側面の方が多い。
恐らくそれは敦も一希も納得済みで、後はタイミングだけの問題であったようだ。
「由佳里ちゃんはどうするの?」
「家にいるよ・・・麻衣子ちゃん来るし、それに翼ちゃんと千恵子ちゃんが暇するから、一緒に過ごすつもり」
悠馬に聞かれ答える由佳里。
麻衣子はあれ以来、鉄也の『オンナ』になってほぼ毎日抱かれている。
当の本人もそれで満足してるらしく、以前の由佳里のようなポジションとなっていた。
そして、翼と千恵子はそれぞれのパートナーと過ごせないので、桐間家にご厄介と言う事らしい。
「悠馬くんはどうするの?」
「うん、家族で過ごすよ」
新しくできた家族と過ごす初めてのクリスマスな訳だが店は開いている。
だから閉店後家族パーティーと言う訳だ。
勿論、真琴や優華、満里奈の新しい家族と、『嫁認知』されてる里菜とだ。
その話を聞きながら、暁美が由佳里に言う。
「由佳里姐さん、アタイは母ちゃんと鉄也兄さんとこ寄せてもらいまスね」
「えっ!、うちこないの?!」
暁美の言葉に驚く悠馬。
悠馬の中では暁美もメンバーに入っていたのだが・・・
「まさか・・・アタイをどう家族に入れるのよ兄さん・・・親父さんに愛人って紹介する気ッスかい?」
笑いながらそう言う暁美は更に言う。
「それにうちの母ちゃんは長坂家で紹介できないッスよ」
暁美の母親、愛は丁度30歳。
中学時代に暁美を孕んで出産。
高校も行かず風俗の道に入って今も現役の風俗嬢。
噂によれば美人ではあるが、物心ついた暁美がいる家に男連れ込んで平気でセックスするような女だったらしい。
どうも鉄也と関わりだしてからまともになったとか・・・
それでも家事は壊滅、家ではだらしないとかで、暁美が言う所の『どこに出しても恥ずかしい親』らしい。
まぁ鉄也ならそんな女は・・・
ド、ストライクだろう。
悠馬は残念そうな表情になるが里菜は若干ホッとした表情となる。
情報通の彼女は勿論、暁美の母親の事はリサーチ済みだ。
悠馬には言いたくないけど、長坂家と絡まないでいる方が吉だ。
まぁ恐らく、龍馬も悠馬も苦手なタイプだろうが・・・
「ふふっ、暁美ちゃん来てくれるのは嬉しいな」
「うちの母ちゃんが全員のサンタコス用意するって言うんで期待してくださいッス!」
由佳里も暁美の母と面識が無いが、鉄也がいいなら大丈夫だろう。
話がまとまったときには夕暮れを迎えていた。
「じゃ、楽しみにしてて下さいっスね!」
暁美は皆と別れ一人で帰宅。
「さて、母ちゃんにも報告しないと…」
母親・愛と2人で暮らすマンション。
愛は現役風俗嬢であり、実質的な経営者、その上店のナンバーワン。
収入はかなりのものだ。
鍵は開いている。
あとは家に男を連れ込んでいるかどうか…
「一人っぽいなぁ」
玄関に男物の靴はない。
「母ちゃん、いるー?」
「あ、暁美、おかえりぃ」