そして、少女は復讐する 63
その言葉を聞いて、思わずクスッと笑ってしまう悠馬。
数ヶ月前、まだ童貞だった頃ではあり得なかったことかもしれない。
里菜は自分にふさわしい女性だろうか。
そう自問自答する、でも今のそんな自分も悪くない。
「あの時村田さんをヤってた四人が今の村田さんを見たらどう思うのかしら」
「きっと驚くだろうね」
由佳里は、かつての由佳里とは別人と思えるほどに変わった。
以前の清楚で儚げであるが、どこか重々しい感じだった由佳里の印象はガラッと変わり・・・
表情が乏しかったのも今では笑顔が多くなり言動も明るくなってきていた。
ただ、どことなく色気があり欲情した女の顔を見せる由佳里に、クラスの大半は戸惑いどう接していいか分からない様子であった。
中には前の由佳里の方が接しやすいと言う者もいたり、不良との付き合いがある今の由佳里に嫌悪感を持つ者だって少なからずいる。
だが悠馬はそれを不快だとは思っていない。
むしろ魅力的に思えるのは、悠馬も鉄也達に毒されてきたのかもしれない。
そう考えると自分も少しずつ変わってきているのだろう・・・
「僕さ・・・母親とどう接していいか分からないんだ・・・」
話を変えるように当面の悩み・・・
真琴を母として迎えるに当たっての悩みを里菜にぶつける。
これまで母がいないのが普通であった悠馬にとって、母親とどう接すればいいかなんて分からない。
ましてや真琴と肉体関係がある訳だから余計だ。
里菜は正直で生真面目な悠馬の言葉に笑みを漏らす。
悠馬のこう言う所は嫌いでない。
「ママって呼んでおっぱい吸い付けばいいんじゃない?」
里菜の返しにキョトンとした悠馬だが、一瞬間を置いて笑う。
「赤ちゃんじゃないってば」
「意外と嬉しいものよ・・・私だって悠馬におっぱい吸われたら幸せ・・・だし・・・」
最後の言葉は小さかった。
要は悩み過ぎだ。
なるようにしかならないし、これから作っていけばいい関係だ。
「お母様より優華ちゃんと満里奈ちゃんの方が問題と思うの・・・」
「・・・あ・・・そ、そうだよね・・・」
同時にできる二人の妹。
どちらも悠馬にすんなり懐いたが、特に優華の方は悠馬を『お兄ちゃん』じゃなく『男』と見てる節がある。
そして、彼女の口から語られる敦や健二に対しても、優華は男として見てる様子。
それだけでなく実の兄・・・
鉄也を語る口ぶりは完全に女を通り越してメスになっている。
この歳にして真琴の娘らしい魔性ぶりだった。
正直言って迷うのだ。
兄としての矜持を保つべきか、それとも妹として、いや一人の女性として優華の想いに応えてやるべきなのか。
どちらが理想なのか。
2人で家に帰る。
「おかえりなさい、お兄さん、里菜さん」
出迎えたのはその優華である。
真琴と龍馬の入籍は近日中。
それに先立ち真琴が店の方に手伝いに入る事になった。
真琴が店に来ているから優華と満里奈も同行。
そしてエプロン姿の所を見ると優華はお手伝いを買って出たようだ。
「お帰りなさい、悠馬さん」
「ん、あ、ただいま・・・」
真琴のエプロン姿にどうにも反応に困る悠馬。
和服しか見たことが無かったから、洋服にエプロンはちょっと違和感と言うか目新しさを感じていた。
そして二人にデレデレの龍馬。
大男がデレデレ過ぎて何だか可愛らしいぐらい。
真琴によれば幾度か夜を共にしたとは聞いたが、相変わらず悠馬との関係も切れてないので、気持ち的には色々と複雑だった。
「お父様・・・まだ何かお手伝いする事あります?・・・」
「おおお!、優華ちゃんはゆっくりしてくれていいんだよ!!」
頬を染めて上目使いにモジモジする優華に、龍馬は更にデレデレ。
男を落とすツボを既にマスターしてるようだ。