そして、少女は復讐する 43
「確かこっちだったよな」
アパートを出ると、通りに沿って歩いていく。
この先に、由佳里が搬送された病院があるのだ。
いくら軽傷だったとはいえ、健二も由佳里の状況は心配だ。
しかし、それよりも気にしていたことがあった。
しばらく歩くと、目的地の病院がある。
駐車場に一台の車が止まったところだ。
「…思ったとおりだ」
車から若い女性が降りた。
「ユカリンのとこに行くんだよね?」
「!?…貴方は…」
朝比奈小百合、その人だった。
「俺もユカリンのことが心配なんだ」
「だったら…」
「…だけどね、その前に、あんたと一度深く話し合っておく必要があったんだよ」
小百合が怪訝そうな顔をした。
健二は構わず話を続ける。
「鮎川桜子…知ってるよね?」
「…!!!」
「いや、知らないとは言わせないけどね」
「アナタ…もしかして」
「ああ、俺の、誰よりも大好きな姉ちゃんさ…アンタに人生を台無しにされたな」
健二がそう言った瞬間、小百合の表情が凍りついた。
「姉ちゃんを『親友』だったアンタが売ったんだろ?」
健二にしては珍しい程の怒気を含んだ口調。
凍りついた表情で蒼白になり、唇をわなわなと震わせた小百合は膝までガクガクと震わせ、健二の予想外に・・・
倒れたのだ・・・
「ちょ?!、ちょぉおーっ!!」
流石の健二も焦りながら小百合を受け止める。
まさか、気絶してのけるとは・・・
メンタル弱いに程があった。
「参ったなぁ・・・」
これには健二も困り果てるしかなかったのだ。
気絶した小百合を病院に預け、由佳里の部屋へ健二は向かう。
まさか、彼女がそこまでの反応を示すとは予想外で、今は怒りより戸惑うばかりだった。
だが、逆にその反応は彼女が罪悪感なりを感じてるからだろう。
それだけでも今は良しとするしかない。
そんな事を考えながら由佳里の病室へ。
頭を打っているので、今日だけ検査入院と言う事らしい。
部屋に入ると、ベッドで並んで座る女子三人。
由佳里に夏菜と小夜子だ。
「あら、お前らだけか?」
「あっ、ケンジ兄さん!」
「アケミは3バカの子守り、アユミは塾行っておかみさんの所っス」
由佳里を姐御と仰ぐ中学生達。
親分の暁美は暴走しかねない男子三人組を抑える為にいないのだろう。
そう言う所はよく気が利く子だ。
歩はいつもどおりの行動。
この子もやる事が分かってる。
そして、夏菜と小夜子は高校生組が話し合いしてる事を見越してここに来たのだろう。
「2人共エラいな、ご褒美にベッドで可愛がってやるよ」
健二もいつもの口調に戻っていた。
「あー、そんな事よりジュース欲しいっス」
「モチ、アタシと姐さんの分も」
健二の口説き文句を無視してパシリに使おうとする2人。
「なんだよお前らよ〜、せっかく人が褒めてやったのに俺ってそんな扱い?」
不本意そうに言う健二だが、実際はそうでもない。
「あはは…ごめんね健二くん、お金出すよ」
「いやいや、ユカリンもいいよいいよ」
身体を起こして財布を取ろうとする由佳里を制す健二。
「ちょっと待ってろよー」
「兄さん、あざっすー」
健二は一旦病室を出た。