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ノーマンズランド開拓記
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ノーマンズランド開拓記 26

「ちゅ…中隊長…?」
「そりゃ良い所もいっぱいあるんだけどな…優しい所とか…でも俺達が求めてるリーダー像って、ああいう感じじゃないんだよ…なんか、こう…あんまり細かい所は気にしなくて良いから、こう…ドンッと構えててもらいたいんだよな…」
「そ…そうっすね…」
「それでもな、ベイウッド…」
ふとクラウスは真顔になりベイウッドの肩に手を置いて言った。
「…俺はあの方を立てて、この開拓事業を何としてでも成功に導くと決めた。だからお前も今は黙って大人しくしててくれ。…そう心配するな。悪いようにはしない。お前や皆を失望させるような結果には俺がさせん。だから騙されたと思って、一度だけで良いから信用してくれ…頼む!」
そう言ってクラウスは頭を下げる。
ベイウッドは大慌て。
「い…いや!中隊長!そんな…困りますって!頭上げてくださいよ!…解った!解りましたよ!俺もあのガキ…じゃねえ、ルーク様を信じますから!ですから…!」
これを見ていたロッサーナと弟分達は顔を見合わせ、肩をすくめて微笑んだのであった。

その後…
「ぐがぁ〜…!!」
あれからクラウスに付き合う形で30分ほど飲み続けたベイウッドは酔いつぶれて眠ってしまった。
「はぁ…ったく、このバカは…酒弱いクセにペース配分考えないでムチャ呑みするんだから…」
呆れながらもベイウッドに肌掛けを掛けてやるロッサーナ…そんな二人の様子を微笑ましく眺めながらクラウスは思う。
(どうやらベイウッドは心配いらなさそうだな。短絡的で思慮の浅い所はあるが、基本的には悪い奴じゃあない…となると、残る火種は“奴ら”の方か…あちらの方が遥かに厄介そうだ…)
クラウスの言う“奴ら”とは、果たして…?


翌日、調査隊は三隻の船の内の一隻であるチャレンジャー号に乗り込み出発した。
付近一帯の海岸沿いは既に調査済み(と言っても上陸はしていない)であり、地形も把握している。
開拓団が拠点として定めた入り江から少し南へ行った所に河口があった。
ハーヴィン教授によると、先住民の集落があるとしたら(用水の関係から)川沿いにある可能性が高いという。
調査隊はこの川を遡って奥地を目指す事にした。
隊長はルーク、補佐役にジェシカ、他にイワノフ、ハーヴィン教授らがメンバーだ。

さらに大人達の中に混じってただ一人、年端も行かぬ少年の姿があった…アレクである。
姉エリスを慕っていたアレクは、自ら調査隊に加えて欲しいと名乗り出たのだった。
だが何が起こるか解らない危険な調査…当然ミシェルもジェシカもマリアも反対したが、最終的にクラウスが同行を許可した。
アレクはもう大人達と行動を共にするに足る…クラウスはそう判断したのだ。

「若様!いざという時は僕が必ず若様をお守りいたしますからね!」
初めての冒険にアレクはすっかり昂揚し、頬を紅潮させながらルークに言う。
あの美人三姉妹の弟だけあって少女のような優しげな顔立ちをしている。
こいつは将来、女泣かせになるかも…。
ルークは答えた。
「ありがとう、アレク。頼りにしてるよ…でも、その“若様”って言うのはやめてくれないか…」
「はい!解りました、若様!」
「ハハハ…まぁ、おいおい慣れてくれれば良いよ…」
どこかで覚えのあるやり取りにルークは思わず苦笑する。

そんな彼らの様子を遠巻きに眺めている軍服姿の集団があった。
「フッ…呑気なもんだ…」
「まったくですな、ロレンツ大尉殿。あんな子供を遠征に同行させるとは…クラウス殿も一体何を考えているのやら…」
彼らは工兵のキースと同じ、アスファルティア王国軍の軍人達である。
もともと海兵として船に乗り込んで一緒に付いて来た連中だ。

ちなみに海兵とは、端的に言えば軍艦に乗り込んでいる陸兵の事であり、船の運航を担う水夫や彼らを指揮する海軍士官とは基本的に所属が異なる。
軍艦内にあって海軍の指揮系統に属していない彼らだが、戦闘時には斬り込み隊として敵船へ乗り込んで戦い、平時には艦内の治安維持に当たっていた…いわば陸軍と海軍の“協力関係”である(後に“海兵隊”という独立した組織になるのだが、それはもう少し後の時代の話)。
また、敵地などに上陸してその土地を占領した際には、本来の陸兵に戻って現地に留まって橋頭堡を確保する役目も担う。
今回のアルディア開拓においても“植民地軍”正規兵として(数は多いが練度の低い民兵達と共に)治安維持および開拓民の保護…つまり先住民との戦闘に従事してきた。

アスファルティア王国の陸軍は一枚岩ではない。
海軍が国家と王家に忠誠を誓う“王立海軍”であるのに対し、陸軍は“王家と貴族達による連合軍”の要素が強かった。
中世騎士の時代からの伝統なのだが、陸軍は貴族達の影響力が強く、王家への忠誠心も海軍ほど高くは無い…。


チャレンジャー号は河口付近に錨を下ろし、ルークら探検隊メンバーは陸地へと上陸すべくボートへ乗り込んだ。
ルークは出発を見送る船長と海軍士官達に言う。
「船長、船の方は任せたよ」
「はい、ルーク様。どうかお気をつけて」
「ありがとう、では行ってくる!」
ルーク達を乗せたボートは船から遠ざかっていった…。

ところが…
「…ようし!では我々も準備を始めよう!」
「「「はっ!!」」」
ルーク達の姿が見えなくなるや否や、まるでそれを待ってましたと言わんばかりに海兵達がロレンツの指揮の下、バタバタと動き始めたのだ。
「「「……?」」」
船長達は訳も解らず眺めていたが、海兵達が船に備え付けられていたもう一艘のボートを勝手に下ろそうとし始めたのを見て慌てて止めに入った。
「ちょっと待て!!ロレンツ大尉!何をするつもりだ!?」

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