PiPi's World 投稿小説

ノーマンズランド開拓記
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

ノーマンズランド開拓記 1

大小50以上にも及ぶ国々のひしめくエルシオン大陸から太陽の沈む方角…すなわち西へと船を進めること約3ヶ月で到達するのが新大陸、アルディア大陸である。
その土壌は耕作に適さず、めぼしい地下資源も発見されていない。
昔から漁師や海賊などによって存在だけは何となく知られていたが、上記の通り何の利用価値も無い土地なので、どこの国も領有化しようとは思わず、本格的な調査もされないまま、数世紀に渡って放置され続けて来た。
人々はこの大陸を人の住まない土地…ノーマンズランドと呼んだ。


「陸だぁー!!陸が見えたぞぉー!!」
マストの上から船員の叫び声が響く。
「あぁ…やっと…やっとこの閉塞環境と船酔いから解放されるんだぁ…」
その知らせを聞いて、まるで永遠の暗闇に一条の光明を見出したかのような表情で呟く一人の青年の姿が甲板にあった。
顔立ちには未だ少年の面影を残す彼の名はルーク・ライオネス。歳は先月17歳になったばかりだ。
実は彼、エルシオン大陸にある故国からある大任を受け、3ヶ月の船旅を経てここ、アルディア大陸へとやって来たのである。
「はぁ…しかし見渡す限りの森林地帯…本当に何にも無い土地なんだなぁ…こんな所を開拓して住めるようになるんだろうか…?」
視界の左右いっぱいに続く海岸線を見つめて溜め息混じりにつぶやくルーク。
そう、彼はこのアルディア大陸への植民と開拓の総責任者を任されたのである。
なぜ17歳の青年にそんな大任を…?
それには以下の如き顛末があった。

アスファルティア王国…エルシオン大陸東端に位置するこの中堅国家がルークの生国だった。
彼はこの国の中級貴族の次男坊として産まれた。
だがその出生の裏には、場合によっては国家を揺るがしかねない曰わくがあったのだ。
というのも、実は彼の母親が時のアスファルティア王の妹で、ルークが産まれる少し前に彼女は隣国の王の元へ不可侵条約の人質も兼ねて嫁いだ。
その直後、アスファルティア王国は不可侵条約を破棄して隣国へ侵攻、不意を突かれた隣国はあっさり滅亡した。
つまりは騙し討ちである。
隣国の王は王都落城の際に戦死したが王妃…すなわちアスファルティア王の妹は奇跡的に救出され祖国へ帰還した。
そしてその後、彼女はアスファルティア王の臣下で、ちょうど先妻に先立たれて独身だった貴族の一人と再婚し、直後にルークが産まれたという訳だ。
…が、産み月があまりに早過ぎたため「ルークは滅ぼされた隣国の王の子ではないのか?」という疑惑が上がった。
ルークはそんな自分に関する不穏な噂を耳にする度に肩身の狭い思いだったが、彼の母はもちろん父さえも、彼を疑い無い我が子として、他の兄妹と分け隔て無く扱った。
ルークには父が先妻との間に設けた異母兄と、ルークの後に父と母との間に産まれた妹がいたが、この二人もまた両親同様、普通の兄弟としてルークに接した。
このように家族には恵まれたルークであったが、世間はそう甘くはなかった。
国としては微妙な問題なのだ。
何せ滅ぼした国の王族の血を引いているかも知れない子である。
いつ王家に不満を持つ勢力に担ぎ上げられて内乱の火種にならないとも限らない。
そんなもの危なっかしくて国内に置いておけないではないか。
ルークが成長するにつれ、その不安は増大していった。
かといって、何の咎も無い前途有望な青年を…しかも国王の甥を殺す訳にもいかない。
という訳で、手っ取り早く遠い所へ追いやってしまえという結論に達した。
かねてよりアスファルティア王国では人口の増加による食料、土地の不足が懸念され始めており、この解決策としてアルディア大陸への移民および開拓が検討されていた。
そんな訳でルークは、この一大プロジェクトの名誉ある総指揮官として大抜擢されたのであった。
本人の意思とは無関係に…。

「……この計画自体も危ないしなぁ」
ルーク自身こんな生い立ちを知っているが、変えようがない理不尽を忘れるにはノーマンズランドの開拓は丁度良いかもしれない。
これまでの調査は沿岸部の極限られた場所であり記録もバラツキがある。つまり森林地帯がどこまで広がっているのか誰にも分からないし、本当に耕作に適さない土壌しか無いのかも分からない。
「前方に湾がありますぜ……」
「そこに錨を下ろしてくれ」
湾は深く、船の出入りには充分だ。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す