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バトル・ザ・ヴァンパイア
官能リレー小説 - その他

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バトル・ザ・ヴァンパイア 8

膝枕をしたままのアリアが、彼の前髪を優しく払いながらアリシュラに言う。
「まぁ、それは仕方の無い事としてだが・・・アリアッ、何だアレは?! さっきコイツの中から出てきたモノは?! 余りの突然で飲み込んでしまったが、苦いし臭いじゃないか!」
彼女の言うことに渋々といった表情で納得するアリシュラ。だが、次の瞬間には顔を真っ赤にさせ彼女へと食って掛かる。
声の大きさは、彼が目覚め無いように小声に抑えている。
「あら、お嬢様・・・此方に来る前に教えたではないですか。 男の人のペニスは勃起した後、ソレを刺激すると精液という白い液体が出てくると・・・」
「確かに教わった。 が! 幾らなんでもッ・・・うぅ、まだ口の中がさっきのでいっぱいだ・・・」
智を魅了し攻めた姿勢は何処絵やら、すっかり純情な少女へと姿を変えたアリシュラ。
顔を赤く指せ、モジモジとさせる彼女を、智が見ていたら驚く事だろう。

しかし、彼女の言い分も仕方ない。
何せ、“初めてのフェラチオ”で口内射精をされたのだ。いくら何でも“まだ処女”な彼女には些かきつ過ぎたモノだっただろう。
「まぁ、まぁ・・・お嬢様の言いたい事は分かります。 ですが、今はようやく“参加資格”が得られた事をお喜びになってはどうですか?」
顔を真っ赤にさせてジト目で此方を睨んでいる自分の主に、彼女は言い聞かせるように言う。
「うぅ゛〜・・・んン゛ッ・・・そうだな。今は、ようやく参加資格が手に入った事を喜ぶべきか・・・」
アリアの言った事に納得出来ない様な表情のアリシュラだったが、咳払いをして冷静を取り戻す。
「いよいよですね・・・お嬢様・・・」
安らかに眠っている智を膝枕したまま、窓の向こう側を見つめるアリア。
「あぁ・・・いよいよだ。 これで・・・これで、私は“使命”を・・・」
俯いて、自分自身に言い聞かせるように言うアリシュラ。顔を上げ窓を見上げる彼女の横顔は、戦士の様に鋭い。

二人が見つめる窓の外。満月が浮かぶ漆黒の闇は、全ての物を飲み込まんとただ静かに佇んでいる。

――――・・・・

「んん・・・あれ? 此処・・・・?!!」
深い眠りの深海から、浮上するような不思議な感覚の中。智は目を覚ます。
まだ完全に覚醒しきっていないその顔は、ボサボサになった髪とマッチして完璧な間抜け顔だ。
そして、眠気眼のまま辺りをキョロキョロと見渡す。フカフカとした高級感溢れるベット。ビンテージ感溢れる室内。
そして、“上半身裸の自分と机に置かれている鞄”に目が止まった瞬間、背筋と脳裏に電流がほとばしる。
一気にフラッシュバックするは昨日の出来事。濁流の様に押し流れてきた記憶に、彼の体はガタガタと震えだす。

(そ・・・そうだ! 此処から、逃げないと!!)
そう、脳裏に過ぎった瞬間。彼はベットから抜け出し、イスにかけてあったシャツと鞄をひったくっていた。
靴下はおろか靴も履かず、シャツは汗でベトベト、ボタンもチグハグで見っともない事この上ない。
しかし、今はそんな事など知ったことではない。
今の彼には、“この奇妙な館から一分一秒でも早く出る事”しか頭に無く。それ以外は、全て眼中に入ってはいないのだ。

乱雑にドアを開け、絨毯が敷かれ“綺麗になった廊下”をドタドタと駆けていく。屈折階段を激しい音をたてながら下り、木製のドアへと体当たりをする。
弾かれる様に開いたドアから飛び出す智。冷や汗と恐怖で強張った顔のまま、彼は館の方に見向きもせずに森の中へと入っていった。

「良かったのですか? 彼を出て行かせて・・・」
館の二階、とある一室。其処は、先ほど彼が目覚めた部屋よりも豪華な仕様になっている。まるで高級ホテルのロイヤルスイートルームを彷彿とさせる室内。
その中で“一部始終を見ていた”アリアは、イスに腰掛け、ゆっくりと紅茶を飲んでいる主に声を掛ける。
「“逃げられんよ”」
一口紅茶を含んでから、一言。しかし、その一言には絶対の自信と、有無を言わせない迫力が混じっている。
そんなアリシュラの様子をアリアはただ黙って聞くばかり。メイドたるもの、主人の話の内容には絶対に触れないのが一流。
故に、何故彼女がそこまで自信を持つのかをアリアは聞く事はない。
「それよりも朝食の支度をしてくれ。 腹が減った」
「かしこまりました」
そして、終ぞ窓を一度も見る事も無くアリシュラはイスから腰を上げる。ツカツカと歩きながら、アリアの横を素通りして部屋の外へ。
残されたアリアは、ペコリと一礼すると再び“音も無く姿を消した”。



「はぁッ! はぁッ! はぁッ!!」
荒い息を吐きながら、智は例の館から真っ直ぐに走り続けていた。まだ日が出て間もない森の中は、鬱蒼とした闇を作っている。
それでも彼の足は止まることはない。いや、止められないと言ったほうが正しいだろう。

(何なんだ?!何なんだ?!何なんだよぉ?!!)

館から飛び出してきてから此処まで、繰り返し反芻される疑問が彼の脳裏を駆け巡る。
常識では知りえない不可思議極まる体験は、彼の心に「恐怖」の二文字を深く刻みつけていた。

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