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バトル・ザ・ヴァンパイア
官能リレー小説 - その他

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バトル・ザ・ヴァンパイア 1

血の様に赤い満月。
そんな月の下を、さながら踊るように跳び回る一つの影。
屋根から屋根へ、人では為し得ないその跳躍の軌跡は、満月の光と相成って一つの芸術である。
ダンスのステップを刻むように翔けるしなやかな美脚の持ち主は、この世のモノとは思えない程の美少女であった。
紅い光に照らされた白い肌に、気品を感じさせる美貌。
ルビーよりも紅い瞳は、男ならきっと誰もが魅了されるだろう。
スタイルも良く、華奢な体を包み込むフリルのドレスからは彼女の体のラインを忠実に浮かびあがらせ、爆乳と言っても差し支えない胸は、大きく露出しその妖しげな美しさを存分に見せ付けている。
「おい。いい加減姿を現したらどうだ?先ほどから後をつけられていては、おちおち満足に散歩も叶わん」
「ふむ。こちらとしては、ストーカーになった覚えは無いのだがな」
ビルの屋上。其処で立ち止まった美少女は、自分の背後に向かって声を掛ける。
すると、屋上の扉の上。水槽が置かれ、月明かりが届かない影になっている所から、落ち着いた口調で返す一人の女性が姿を現した。

美しく長い銀の長髪。
不敵と余裕を混ぜ合わせた笑みを浮かべる顔は、クールビューティーと言ってもいいだろう。
世の女性なら誰もが羨むであろうスタイルを包んでいるのは、海外で見るシスターの服。
「貴様、“参加者(メンバー)”か?」
「いいや。・・・私は、“部外者(アウトロー)”だ」
不機嫌を隠そうともしない美少女の問いかけに、涼しげな笑みを崩さず答える女性。

次の瞬間、世界から音が消え去った。

―――ドゴォッ! ゴッ、ドドドッ! バガァッ、ガッ、ドォンッッ!!!

「チッ」
「ふふ」
一拍遅れて戻ってきた音は、女性が投げた高速のナイフを無駄ない動きで避け、細い腕を力いっぱい振り払う美少女の音。
そして、苛立ちの舌打ちと不敵な笑い声である。

「ふっ!」
短い掛け声と共に、右手の指の間に挟んでいたナイフを投擲させる女性。
その速さは銃弾よりも早く、狙いは狙撃銃よりも正確である。
「チッ! このぉっ!!」
そんな目にも留まらぬ速さで投擲された三本のナイフは、苛立ちの様子を隠さない美少女の右腕による振り払いで、別の方向へと飛ばされる。
二人が激突して、最早どれくらいの時間がたったのか。それは、彼女たちの状態が教えてくれた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「ふふ。どうした? たった“10分”でそれほどとは・・・。やはり、“眷属”がいなければ十全な力は発揮できないか?」
互いに、向かい合うように立つ美少女と女性。その距離およそ約10m。
「ふんっ。貴様など今の状態でも「嘘だな」・・・ッ」
「先ほどから、お前は防御と回避しかしていないし、此方がちょっとスキを見せても攻撃すらしない・・・」
屋上のフェンスの上で、向かい合いながら会話を始める二人。
傷が目立ち、肩で息をする美少女に、傷や息も乱れてはいないシスター姿の女性。

勝敗は、誰から見ても明らかであった。

「それに・・・」
「っ?!!」
―――ズバァッッ!!!
美少女は自分の中の勘に従い右へと跳躍する。
次の瞬間、美少女がいた場所。正確には、彼女の心臓があった場所を三つの閃光が通り過ぎた。
数メートル跳んだ彼女は、右腕を振り切った状態でうつむいている女性を見やる。
「こんな見事な満月の下で、私の様な人間にいいようにされている。夜の支配者の名が泣くぞ? ヴァンパイア」
「・・・」
確信めいた口調に、ニヤリと見下した笑みを浮かべなる女性。美少女は無言で睨むことしか出来なかった。
「・・・ッ!」
そして、何かを決意した彼女は血が流れている右腕を渾身の力を込めて薙ぎ払う。
「くっ!・・・・・逃げたか」
そのとき発生した砂埃に視界を奪われた女性。少し経って砂埃が収まった頃、其処には美少女の姿は無く、ただ無残にひしゃげたフェンスしかなかった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・うぐっ」
先ほどの戦闘で出来た傷の痛みを何とか耐えながら、美少女は屋根から屋根への跳躍を繰り返す。
見るも無残な光景である。
白く美しい肌には、幾つもの切り傷が。アザは青タンとなり痛々しく、淡く綺麗なピンクの長髪はボサボサに乱れ、ワインレッドのドレスは、辛うじて服としての機能を残すばかり。
それになにより。
「っ!? うぅっ・・・・ぐぅぅ・・・っ!」
砂とホコリ、切り傷と血に汚れた顔を脂汗を滲ませる彼女。
逃げる直前、あの女性の最後の攻撃。
自身の勘を頼りに避けざるを得なかったあの攻撃は、彼女の左脇数センチ下を思いっきり切り裂かれていたのだ。
あまりの痛さと疲労で意識が朦朧とし、彼女は最早どこをどう跳んでいるのかすら分からなくなっている。
そして。
―――ガシャンッ!・・・ドサッ
何処かの家のガラスを突き破った音と床に倒れこんだ音を最後に、彼女の意識は完全に黒く塗りつぶされた。

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