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バトル・ザ・ヴァンパイア
官能リレー小説 - その他

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バトル・ザ・ヴァンパイア 2

「それじゃ、お先です」
「おぉ」 「お疲れ様でした、先輩」
部室から出る直前、彼は部屋に残っている先輩後輩に声を掛ける。
若干熱気がこもっているコンクリート製の部室には、部活を終えて思い思いに喋ったり帰り支度をする何人かの生徒がいて、彼らは様々な口調で答えていく。
そんな彼らの声を背に聞きながら彼、中武智(なかたけさとる)は部室を後にした。

「あぁ〜・・・・疲れた」
夕日の空の下、智は学校へと続く坂道を下がっていた。
彼が通う芦原高校は、小高い丘にに建っているので学校までの約数百メートルをこうして毎日坂を上り下りしているのだ。
「はぁ・・・ん? アレは・・・」
そんな道をため息を吐きながら歩く彼の目にソレは映った。

『幽霊館』
彼が住む町の住人からそう呼ばれる不気味な館である。
学校と街のちょうど間の丘にポツンと佇むその建物は、周囲を囲む森の様子と溶け合あって其処だけが時間が止まっているような錯覚を覚え、その不気味な景色を見て誰かが言うようになったのが始まりらしい。
それ以来、この屋敷を取り壊そうという運動もあったらしいが噂に尾ひれが付きに付き、その運動も早々と消滅して今もこうして残っているそうだ。
「・・・」
街の誰もが知り気味悪がる屋敷を立ち止まり見つめ続ける智。そして何時しか、その足は自然と屋敷の方へと進んでいった。

「・・・」
あれから、何処をどう通ったのかは分からない。彼が気がついたときには、彼は屋敷の前に佇んでいた。
茜色の光に照らされるレンガ造りの屋敷。赤レンガの壁は光を反射し、白と黒のレンガで出来た屋根は鈍く光りその様子が周りの森と相まって、不気味さをより一層強めている。
「さて・・・どうしようか・・・」
一目見て不気味さが十分に伝わる屋敷を前に、彼は悩み声を上げた。
普通の人間なら不気味悪さに退散する所だが、今の彼にはそんな気持ちは無く、ただ純粋な好奇心が智を突き動かしていた。
――ギ、イィ・・・。
放置されてかなりの時間が経っているであろう分厚い木の扉をゆっくりと開ける智。
中はやはりと言うべきか、こもった空気と大量のホコリが積もっていた。それが、扉を開けたことで入ってくる風に舞って彼の視界をさえぎっている。
「う、ごほっ、ごほっ・・・。 酷いホコリだ・・・でも、中は結構広いな」
右手で口と鼻を覆いながら、彼は今見える視界でエントランスであろう場所を見渡した。
木で出来た屈折階段に、今彼がいるところから見て左斜め前方にある木製の扉。上を見上げればうっすらと見えるシャンデリア。
時代が時代ならさぞ美しかったことだろうそれらは、全てが等しく時間をピタリと止めている。
「うぅ・・・やっぱ帰るかなぁ・・・」
薄暗いエントランスを見渡しながら彼はポツリと呟く。地域の住人から幽霊館と言われる事の一辺を味わった彼は、理性から発する警戒音にやや怯えてしまう。

しかし、そんな事も次の瞬間にいとも簡単に消し飛んでしまった。

香りである。放置され、ホコリやカビ等の臭いが満ちたこの空間の何処からか、今まで生きていた中で一度たりとも嗅いだ事のない甘くて芳香な香りが彼の嗅覚を刺激したのだ。

バラやラベンダーの様な花の匂いとは違い。どちらかと言うとイチゴやラズベリーといったフルーツの匂いに近いソレは、恐怖で帰ろうかと傾きかけていた彼の心を立て直すのに十分すぎるモノだ。
「・・・」
彼の足が不思議と館内へと進んでいく。意識が無いのか、彼の表情は呆然としたままでピクリとしない。
そしてそのまま屈折階段を上がり、二階へ。上がると彼から見て左右に廊下が延びている。
スンスンと鼻を動かす智、最早意識が無い彼を突き動かしているのは“この香りをもっと嗅ぎたい”と言う本能的欲求だけだ。

香りは右の廊下から香って来るようで、自然と彼の足も右の廊下へと向けられる。
長いこと放置されたことで床に敷かれた絨毯はホコリを被り過ぎて灰色になっており、壁と天上にはヒビやクモの巣がいたるところに存在している。
そして、壁に等間隔である木製のドア。コレも長い時間の中で錆やカビが付いている。

「・・・」
廊下の突き当たり、最後には窓が設置されていて其処から夕日の光が廊下を照らしている。
突き当たりから数えて二番めのドアの前で彼は足を止める。どうやら、件の香りの発生源はこの中にあるらしい。

「・・・っ」
中に入って香りの正体を見ようと錆びたドアノブに右手をかける智。
一瞬理性が発する警告に躊躇してしまったが、ソレには見てみぬフリをして彼はドアをゆっくりと開けた。

夕日が射しこむ室内、彼の眼前には壊された痕跡が残る窓。其処から入る風が、古びたカーテンを揺らしていた。
誰かの手が加えられたのかホコリやカビ、クモの巣などが全く無くとても綺麗で、中心には丸テーブルとイスが一つ。 
視線を右にずらすと、其処には豪華なベットが一式置かれているのが分かる。

「・・・」
恐る恐るといった感じで智は部屋へと入る。部屋は、彼が嗅いでいた香りで溢れていた。
「すぅー、すぅー・・・」
「っ?!!!」
微かに聞こえる誰かの寝息に、智は叫びそうになったのを何とか堪えることに成功した。
そしてゆっくりと彼は振り返り、息を呑んだ。

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