原始人 36
その辺りからアルに余裕が出てきているように感じた。ティティを犯した時はさっさと背を向けてしまったが、あの卑猥な船に乗った時は冷淡さは感じられなかった。
昔のアルだったら船員の男達を殺していたかもしれない。なんというか海を渡る船員達に同調しているような雰囲気すらも感じられた。
少なくとも自分達に襲いかかった船員達をわざわざ回収して船に積み込むのは変わっていると思えた。気絶した船員を置き去りにすれば村に危害を加えるから引きはなそうというのは表向きの理由で、どうにかして彼等も広い海に連れていきたいのかも知れない。
ティティはそう推測をした。
「ねえ、アルに、言ってみたら。帰りたい、もう冒険は嫌、ってこと」
「え?」
ティティはそう言ったマアをまじまじと見つめた。
「マアは、どう思うの?」
「私は…もう少し、ついていきたいかも」
「えっ?」
「この海の向こうに、何があるのか見てみたい、って、私も、ちょっと思う」
ティティは海の向こうに更なる淫らな罠が待ち受けているように感じられた。そんなところに向かおうとしてるマアは魅力に取り込まれているのではと思える。
ティティの予感は当たっていた。海の向こうの石の町は、アルによって捕獲された船員達をも巻き込む事態を引き起こす。
アルから離れる同意を得たティティは、中継点の島で船を乗り換える。
明日、双方の船が別々の方向へ出港するという夜。アルはティティと二人きりで海岸に出た。
“もう、ティティには会えないかもしれない…”
アルの頭の中には、ティティと出会ってから今までのことが走馬灯のように思い出された。
「ティティ、いいか?」
ティティが返事をする前にアルはティティの体を抱き寄せていた。