原始人 33
船員と少女が、なにやらいろいろ話している。
「マア、何て言っている?」
「よくわからないけど、本来やるつもりだった取引ができなくて残念だ。船を出す、みたいなこと」
そして、他の船員が少女に布を差し出していた。
「この島に誰もいない状態だったら、君も我々と来るか?でも、それだったら、腰に布を巻け、みたいなこと」
それ以外の、箱に入らなかったメンバーは、島にいるうちは布は外していたが、船に乗るときに布を渡されていた。
島には誰も居なくなったわけではない、全員が快楽に気絶しているだけだ。しばらくすれば目を覚ますだろう。
なので少女は少し迷っているようだった。
アルは停められた船の中で船員を収めた箱を観察する。表面は磨いた石のようで、大きく開いた窓からは中が見えた。
少女と船員はさらにもう少し話している。
「ああ、間違って伝わっちゃってたみたい。他の人が気絶しているだけ、って分かって、目が覚めるまで待とう、ってことになったみたい」
そして、少女は、布は返して、そこにいる全員に手を振って…アルは、この動作は言葉が違っても共通なんだ、と感じていた…船から降りていった。
ジョオは自分を襲った四人組の入った箱を見ていた。
「どうしたんだ?」
アルは話しかけた。
「中の男の全身が見えるほどに透き通った素材なんて見たことがないと思ってな」
ジョオはそう言いながらそれをコンコンと叩いた。
「やっぱり石みたいに硬いな」
「そうか」
アルはその箱に触れてみた。冷たい。
「マア」
「何?」
「この箱見たことある?箱、っていうか、この透き通って硬くて冷たいやつ」
「見たこと無い。聞いてみる」
マアは船員と少し話した。船員は、腕を伸ばしてどこか遠くの方を指差した。
「なんか、あっち…太陽が出てくる方から来た箱だって」
アルは、石を積み上げた家より大きなものがその方向にあると聞いたことを思い出した。その方向には、アルが知らないいろいろなものがありそうだ、と彼は改めて思った。