原始人 31
ジョオは、彼に一番近い蔓を払っていた。そして他の船員はうつ伏せに横たわっていた。
「おお、ここは、手でなんとかなりそうだぞ」
アルは、ジョオの無事な姿を見てほっとしながら、自らに迫った蔓を振り払った。
ふと外を見ると、空が白み始めていた。
四人の船員達は尻に蔓が少しだけ入ってしまったらしい。脱力していて中々起き上がろうとしない。
「仕方ないな、ここに寝かしておくか?」
アルがそう言うとジョオが残って彼等を見張ると言い出した。
「そっちの気絶した少年達はどうするんだ?村の人に引き渡すのか?」
村の人と言っても蔓から逃げ切れたのは少女達くらいしか居ないのだが…。
マアがその状況を、丁寧に少女に説明した。
少女は、一言言うと、突然、薄明かるくなったその明るい方向へ走りだした。
「船の人に、相談する、みたいなことを言ってる」
「じゃあ、あの子の走っていった先に、船が来るんだな」
少女が船の方に向かっている間、話を再開させる。
「ところで船員達はどうするんだ。村に置いておくわけにもいくまい」
自業自得とはいえ、あんな目に遭わされたのだから村人を逆恨みする可能性はあった。
気絶している彼等や村人が目を覚ます前に決めておくべきだと思えた。
船員と村の男は肌の色が少し違っているので識別は容易だった。褐色のが船員だ。
だがそれらを安全な位置まで引き離すことは出来るのだろうか…?
「面倒なことが起こりそうだなぁ」
どうすべきか全く見えず、どっと疲れてきた。