原始人 26
「蔓から逃げたのを忘れたのか!」
アルの言葉をマアが訳して、船員たちはようやく我に返って子供たちを離した。子供たちはさらに山の方へ走る。アル達も彼らを追うように蔓を背に移動する。
「マア、この蔓の動きは、異常なことなのか、聞いてくれ」
アルは早足で移動しながら言った。
マアはそこらの人に次々と話しかけ、村の誰もこんなことを見たことがないという内容の事を言った。
村の中心に生えた大木は船員を犯しながら更に太くなっていく。ピンク色の花の蕾の様なものすら確認が出来る。
アルはその花がやたらと卑猥な造形に見えた。
アルは走りながら左側に狭い岩の裂け目のようなものがあることに気づいた。
“この大木は、狭いところにははいってこないだろう”
アルはとっさにマアの手を取って二人でその裂け目に入った。
見ていると、花はどんどん膨らんでいく。
そして、捕獲していた船員の一人をなかに投げ込んでしまう。
「ああ…」
クチャクチャと卑猥な音がして、少しずつ船員の体が花の中に包み込まれていく。
血が出ているわけではないので食べられているわけではなさそうだった。
「ヤ!」
さっき一度抑えられていた少女が裂け目の入り口に来てアルとマアに手招きする。
「こっちへ来て、って言ってる」
アルは少し考えた。広がっていた蔓は今は活動していないように見える。あの大木は、花が膨らむ動きはあるが、枝が急速に広がっていくようには見えない。