原始人 24
ギャバーは蔓を払いながら少年、そして少女をアルたちがいる丘の上に逃げるよう誘導して、最後に自らも丘に登った。
何人かは蔓に追いつかれてしまっていたが、アルたちの前に逃げ切った少年少女とギャバーが現れた。
助かった女子がいたことにアルは少しほっとした。
「なんなんだあれは!」
ギャバーがなぜかアル達を責め始めた。
「わかるわけないだろ…そもそもお前達が村の男達を襲わなかったらこうはならなかったんだよ…」
アルは船の中での淫らな行為を思い出して頭がモヤモヤとしてきた。
「あんたにも、分からないってことだな」
アルは、頭を整理する意味でも、半分独り言のように呟いた。
でも、この少年少女は前からここにいたのだから知っているかもしれない…アルは、そう思ってマアに問い掛けた。
「マア、この子供たちと、話せそうか?」
少年の話によるとここの住人はある植物の力により数を増やしているようだった。全くよくわからないのだが、とにかく時期になると巨大な果実が出来てそこから産まれてくるらしい。
「見た感じは人間と変わらなく見えるが…果実から産まれてくるなんて信じられないな」
アルは、小さい頃に親から聞いたいろいろな伝説を思い出していた。聞いたときは、単純に、聞いたその人間以外の存在がすぐそこにいるような気がして怖いようなおもろいような気がしていた。
親から離れて、そうしたものが「天上の存在」と同じくらい遠いものだと理解するようになっていった。
でも、この島の住人は、そうした遠い存在が目の前に現れたのか…だとすると、人間がいるべきところでは、ないような気がする…
アルはしばらく、海の方を見て考えていた。
「なあ、マア」
「何?」
「この島の言葉が分かる、ってことは、この島とあのムラは交流があるのか?」
「うーん」
マアは考え込んだ。
「この言葉をしゃべっている人は船に乗ってきている。でも、この島の人かわからない」