原始人 21
先導している男も危機を感じていた。彼はマアを介して急ぐよう伝える。
森が途切れた。いくつかの、木や藁で出来た家が見える。そして、彼は何か叫んだ。
「女、子供は、山の方に逃げろ、って言ってる」
マアはそう通訳した。
その声を聞いて、何人もの女や子供が、それら家から出てきた。みな、見事なまでに、何も身につけていない。
その男は、マアに向き直って、何か言った。
「私たち、女も、逃げろ、って」
形としては自分達が平和な集落に危険な発情した男達を連れてきたことになる。少なくとも自分達が船を止めなければこうはなっていなかった。
先頭を歩く男もアル達を疫病神のように思いつつあった。
追ってくる男達の技量さえ知っていれば追い返していたはずである。
「私は、残る。私が行ったら、アルたち、話できないでしょ」
マアはアルとジョオに言った。
「ティティだけでも逃げて」
ティティは自らの胸を押さえながら進んでいた。ティティほど肌の白い人は見当たらず、すべて脱いだ今、ティティは一際目立っていた。
「私も残る。私だけ逃げても、私話せない」
先頭を歩く男は目に見えて早足になっていた。そして、言葉が分からない者にも分かるくらいイライラした様子で何か言った。
「なぜ、追われている?って」
アル達は船の中で起こった卑猥なことを生々しく説明した。ジョオが人質にしている四人にも説明させたかったが、彼等はその男の話す言語を話せないらしいので諦めた。
船の中での出来事を聞いているうちにその男は興奮してきたようだった。
マアの通訳した結果がきちんと相手に伝わっていることを意味している。アルはふと、マアは何でこんな卑猥なことまできちんと訳せるほどここの言葉を知っているのだろう、と思った。少なくとも大人になってから、この言葉を話す人に深く関わったことがあるのだろう。
その男の肉の柱も目に見えて大きくなっていた。