原始人 19
その振動で縛られていた男達が目を覚ました。
ジョオを犯していた四人だけは彼等とは別にされていたらしく、すぐそばで彼等の騒ぐ声が聞こえてきた。
「あいつらはどうするんだ?」
「あのまま縛っておくわけにはいくまい…」
「解いたら、何されるか分からない…」
「だが、さっきのように船がぶつかると、船が壊れたかも知れない。船が壊れると、水が入ってくる。水が入ってくると、船はもう浮いてはいられなくなる…」
アルは戦慄した。そういえば、家より大きなものがどうして水の上に浮いて、そして動いているのか、アルはよくわかっていなかったのだ。
「そこで…縄を解いたら、全力で逃げる。奴ら目を覚ましたばかりだから、すぐには追ってこないだろう」
「全員の縄を外している間に正気に戻ってしまう奴が出てくるかもしれないが?」
アルが反論するとジョオは誰かをつれてきた。ジョオを犯していた男だ。
「この船員を人質にすれば手出しはできないはずだ」
船を乗っとる必要がなくなったので人質が船長のギャバーである理由はない。だからといってよりによってこの男を選ぶとは…。
「おい、なんでこの男にしたんだ」
「こいつは俺をずいぶん責めてくれたからな。後でじっくりやり返してやるんだ」
船員一人を人質にしたぐらいでこの船の男達が止まるとは思えなかった。人質が犠牲になるのを覚悟で飛びかかってくるに違いない。
ジョオはそれらしい理由をつけて自らを囲んだ四人の男を船から下ろそうとしているように感じられた。
アルの頭に、またちらりと、カテを変更する天上の存在がよぎり、アルはティティとマアを近くに寄せた。
それでも、あまり考えている時間はなかった。アル達は、その4人と、計8人で、浅瀬を抜け、その陸地に上陸した。
アル、ティティ、マアが先頭に、船から離れ、岩場から森へと進んでいく。
森を少し進むと、アル達は不意に、全く何も身につけていない男に出くわした。
男は何か叫んだ。
マアは言った。
「私、この言葉、分かる…つけているものを全部脱げ。それがここの掟」