ファー・ミリア王国の人々(旧版) 3
ファー・ミリア王国は、大陸の北西に位置する。
人口は、約4500万人。国家の中心となる王都は、西の大海に面する【ミッテンター】。
国の体制は、国王を頂点にいただく王政で、奇妙な身分制度がある。
通貨はドルク。国歌は、『我ら、ともに平穏を抱かん』。
今から550年ほど前、この大陸は、後にも類を見ないほどの戦乱に覆われていた。
国と国が戦争を行い、他国と争わない国では内乱や革命が起こった。
……もはや、大陸に平和な国は無かった。
いつからか、戦火に晒される人々は、大陸の北西へと希望を見いだした。そこの樹海・山岳を越えたところには、戦乱に巻き込まれていない新天地がある、との噂を聞いたからだ。
戦乱に嫌気がさした人々はこぞって北西の山岳・樹海に挑戦した。
当時の未熟な探険技術で、栄養状態が万全とは言い難い人々が、過酷な越境に挑んだわけだ。全ての移民が新天地にたどり着けるわけがなく、大半が志半ばでたおれ、さらに大部分が、山岳や樹海の途中で妥協して歩みを止めた。
そうした過酷な道程をへて、新天地にたどり着いた、とある移民団59(男30女29)人は歓喜した。
戦火も略奪もなく、わずかな遊牧部族が点在するだけの、悠々たる土地に、自分が居る。
これだけで、過酷な旅が報われた。
大陸北西の新たな住民は、衣食住の生産・確保に取り組んだ。
最初の移民から3年が立つ頃には、30世帯からなる村が形成された。
この村こそが、ファー・ミリア王国の母体とされる。
自前の子孫繁栄、新たな移民の受け入れ、外界の文化にひかれた先住民の受け入れをへて、名無しの村は発展していった。
村の成立から70年も立つと、村は都市に、村長は市長に、村政幹部は市政幹部や地区長に、村民は市民になった。
都市成立からおよそ10年、食料生産を拡大すべく、都市の外に六つの農村を作った。
七つの集落を治めることとなった市長は自治領主になり、【ミリア伯】と名乗った。
市政幹部や地区長といった上層市民は貴族に、それ以外の市民や新規農村の村民は、領民になった。
このころ、大陸北西……いつからか【ユートピ】と呼ばれる地方には、【自治領ミリア】以外の移民自治体も少なからず存在していた。
単一の村を拡張させた、自治都市。
複数の町村が結び付いた、連合体。
中枢都市と付随する村々から成る、自治領。
ユートピ南部に自治領ミリアが成立した頃には、ミリアを含む四つの自治領をはじめ、自治都市、町村連合体、先住民集落、合わせて28の自治体が分立していた。
それから90年ほど、28の自治体が共存する年月が続いたが、とある自治領が近隣の自治都市を武力併合したことをキッカケに、自治体同士の争いが頻発した。
自治領ミリアもまた、近隣の自治都市を従え、【ミリア王国】を興した。
11年にも及ぶ戦乱での末、ユートピ地方はミリア王国によって統一され、【ファー・ミリア王国】が成立した。
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「よ〜し、今日はここまで。王国成立の詳しいことについては、明日の授業で教える」
アーイン県フィール町の初等学校6年1組における、この日の授業が終わった。
学級会を挟んで、放課後を迎えた生徒たちは、真っすぐ帰宅する者、図書室に行く者、校庭で遊ぶ者、思い思いに過ごしていた。
そして、
「あああぁぁぁっんん!!」
女子を手ごめにする男子もいる。