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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 86

(でも・・・もう決めた事だ!)
ギュッ、と手のひらを握り締め自分自身に活を入れる。
「爺ちゃん、俺は・・・誰も選ばない」
「ほぉ?」
しっかりとした意思を込めて、俺は祖父に向かって言い放つ。
以外に思ったのか、それとも気に食わなかったのか。祖父の口からは二つの感情が交じり合った声が出る。
「俺は、彼女たち全員と結婚する。 そして・・・爺ちゃん、あんたの跡を継ぐ事も決めた」
「・・・」
グビリ、と祖父はジョッキを大きく煽り中に入っていたビールを無言で全て飲み干した。
「はぁ・・・」、と大きく息継ぎを一回。

「信哉・・・・すまねぇが。 もう一度言ってくれや。 耳が可笑しくなって良く聞こえなかった・・・」
「?!!」

全身の産毛という産毛が逆立った。
聞こえてきたのは、明確な怒気を滲ませた声。
そして、ゆっくりと振り向く其処には。

「聞こえなかったのか? ワシは『もう一度言ってくれ』、と言ったぞ?」

一匹の怒れる龍が、此方を睨んで静かに佇んでいた。
刀の切っ先を向けられている様だ。

そう思わせてしまうほど、目の前の人物から出るプレッシャーに俺は戦慄してしまっている。
「爺・・・ちゃん?」
「あぁ、ワシはお前の愛する爺ちゃんじゃ。 だから、信哉・・・もう一度言え」
今まで見たことの無い冷たい微笑みを浮かべる祖父―龍重。
「え? ちょ、何? 冗談? シャレになって・・・」
恐怖で声が上手く喋れない。何かの冗談だと思ってしまう。
「くどい。 さっさと言え、糞餓鬼」

だが、此方を見る祖父の眼はあまりに冷たい。

(な、何がどうなって!? 爺ちゃんに一体何が・・・!!?)
混乱している。俺は、今異常なまでにパニックを引き起こしている。
思考が機能せず五感はあやふや。今立っているのか、それと宙に浮いているのか分からない。
喉がカラカラに乾いている。
本当に何がどうなっているのか分からない―分かりたくない。

「ッチ。 コレぐらいのプレッシャーでビビりよるか。 話にならん・・・出て行け」
お前の決意など所詮その程度だ、と言わんばかりの口調で祖父は俺にそう言い捨てた。
「やれやれ・・・相変わらずですねぇお義父さん」
「誰が『お義父さん』じゃ!ワシには娘はおっても息子はおらん!!」
俺が突如として豹変した祖父の言動に困惑していると、ドアが開き部屋の外から一人の男が入ってきた。
「ワシは貴様と愛子の結婚を完全に認めた覚えはない!貴様にお義父さんなどと呼ばれる筋合いは無いワイ!!」
「ハァ〜・・・もう、僕らが結婚してから二十年近く経つんですよ?いい加減娘離れしましょうよ・・・」
「フンッ!どうやらワシより先に貴様の方がボケたようじゃの!貴様が卑劣な手段で愛子を誑かして強引に結婚してからまだ十八年と五ヶ月しか経っとらんわい!・・・二十年の大台に乗る前に絶ぇぇぇぇぇぇぇ対に別れさせてくれる!!」
今までのシリアスな雰囲気は一瞬で消え失せ、俺の前で何時もの漫才が繰り広げられる。
「お、オヤジ・・・」
そう、祖父の罵声を笑みさえも浮かべながら飄々とした態度で受け流している男こそ、俺の父である悠木 信一郎(ユウキ シンイチロウ)であった。
「それにお義父さん、せっかくウチの息子があなたの跡を継ぐっていったんですよ? 喜んだらどうですか? と言うか、本当は嬉しくて嬉しくて堪らないんでしょう?」
「・・・貴様」
「おぉ・・・怖い怖い」
ギラリ、と鋭い眼光が親父に向けられるが、親父はそんな眼光すらも飄々として受け流す。
「フンッ・・・食えない奴じゃの。 だが、ダメじゃ・・・こ奴はワシのプレッシャーにビビりよった。 そんな奴なんぞ“いらん”わい。 あの雌犬共との結婚は認めてやろう。 それで、一生ヒモ生活を満喫してこい」
つまらなそうに鼻をはらし、俺をゴミを見るかのような視線を向ける祖父。

だが、それがいけなかった。

「・・・ふざけんなよ」
「あ?」
「ふざけるなって言ったんだよ・・・死にぞこないのクソジジィ」

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