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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 85

「久しぶり。 元気だった?」
半年振りの母親との再会、本当は他にも何か言うべきなのだろうが咄嗟に出た言葉は短く、そして味気ない。
「うん。 大丈夫♪」
しかし、そんな俺の言葉にも母さんはニッコリと笑ってくれた。

「あの〜・・・」
「「うん?」」
母さんとの久しぶりの再会の余韻を味わっている最中、外野のアスカが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「あの、えっと・・・お父さまがベランダで寝ているんですけど・・・大丈夫なんですか?」
恐る恐るといった感じで、ベランダで今だピクリとも動かないゴミ(と言う名の親父)を指差す。
「「あぁ、平気。 平気。 何時ものことだから」」
「「「「「何時ものッ!!?」」」」」
普通に答えると彼女たち五人は驚愕する。その時、見事なまでにハモっていたのは余談だ。

「おぉ! 皆集まったようじゃのぉ。 そろそろ時間じゃし・・・ほれ、さっさと入らんか」
別荘の中から、祖父の声が聞こえてきた。
それを合図に俺と母さんは何事も無く別荘の中へ、婚約者組みは何故か困惑した様子でいたが少し遅れての別荘入り。

誰もいなくなったベランダに一人の男性がポツリ、取り残された。

「さて! 我が愛すべき愛子が無事に帰ってきた事を祝して・・・・カンパーーーーーイッッ!!!」
「わーい♪」
『祝! 愛子、帰還パーティー』
そう書かれた文字の垂れ幕が、デカデカと垂れ下がるリビング。
高級感かつシンプルな造りの空間に、場違い感を全面に押し出している垂れ幕。
そんな垂れ幕を背に、祖父はビールジョッキを景気良く天高く掲げ叫ぶ。その隣では、母が手をパチパチと叩き嬉しそうだ。
「カンパーーーイ!!」
「「「「「カ、カンパーー・・・イ」」」」」
後に続けとばかりに叫ぶ俺と何故かテンション低めな彼女たち。はて、何か粗相でもしただろうか。

木製の長テーブルの上には、ジュース各種、オードブルに肉料理、魚料理、菓子に酒と選り取り見取りな料理が美味しそうな湯気をたたせながら、今か今かと食べられる瞬間を待っていた。
どれもコレも、一目見ただけで高級そうな感じを受ける品々だ。
「こほん。 まぁ、他にもいろいろ言いたい事はあるんじゃが・・・食え! 飲め! 騒げ! 朝までフィーバーするぞおぉぉぉッッ!!!」
『おおおぉぉォォォッッ!!!』
祖父のこの一言に、俺たちは一斉にテーブルの料理へと特攻を開始した。

それから、俺たちはとにかく騒いだ。
何をどうしたのかは、はっきりいって余り覚えていないが、とにかく楽しかったことだけは断言できる。

「信哉。 ちょっとコッチに来い。 大事な話がある」

そんな宴もたけなわ、突然祖父に呼ばれ着いて来たのは別荘の二階のとある一室。
「どうしたの、爺ちゃ「婚約する相手は決まったか」・・・!」
祖父のその一言に俺の意識は現実へと戻される。あれほど高かったテンションも一気に下がってしまった。
ドアを背もたれに、俺は背中を向けて無言でビールを煽る祖父を見やる。
朝と同じ格好のはずなのに、身にまとうオーラと言うべきものがガラリと変わっているのを、俺は肌で感じ取っていた。
何時も陽気で子供な大人―これが、小さい時から抱いていた祖父の印象だ。

だと言うのに・・・。

(何だ? こんな爺ちゃん、初めて見る・・・)
「何だ? まだ決めておらんのか? 早く選ぶ事に越したことは無いぞ」
明るい祖父の声。しかし、何処と無く機械的な口調に俺は薄ら寒い感覚を覚えた。

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