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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 78

そして、それを見計らったかのように境内に姿を現した参拝者達。子供から老人まで幅は広い。
十数分もすれば、境内には人間が溢れかえっていた。
初詣はもちろんの事、除夜の鐘を鳴らす大人にクジや破魔矢を買うお年寄り等、皆やる事は様々で所々では笑い声が上がる。
大いに賑わう境内だが時間と共に人は減り、除夜際を行う午後11時にはほんの一握りの大人たちしかいない。
まるで、祭りの後の様で何ともいえない寂しさを抱えながら、俺たちは本殿へと足を向ける。
寒く厳かな空気の中行われた除夜際。一年間に溜まった汚れを払い落とし、来る年の到来を待ち望み、一年間最後の祭事がこの除夜際らしい。
祭事が行われてい間、俺たちは祭壇を正面から見た右側に縦一列で正座。
勿論、神聖な行事ゆえにジッとしていなければならず、痛みを超え厚ぼったくなってしまった足を揉み解す事も出来ない。
加えて進行速度は驚くほどゆっくりしているので、途中何度も意識が遠退いた事か。
ただそうなった瞬間、左隣のアスカから太ももや二の腕を思いっきり抓られた。正直、とてつもなく痛かったです。
「えぇ〜っと、時間は・・・・うわぁ、深夜の2時・・・・」
「はぁ、夜更かししちゃった。 肌大丈夫かなぁ?」
「そんな事よりも・・・麗は眠いです・・・」
つい先ほどの事を思い返していると、恵理が携帯の液晶画面に表示されている時刻を見てげんなりとした声を上げる。
それを聞いたキャロルは年相応に肌の心配をし、麗は可愛げなあくびを一発。
「三時間正座か・・・驚く事なんだろうけど、今はぶっちゃけ眠い・・・ふわぁ〜・・・」
俺も時間を聞いた瞬間、一気にやって来た眠気に思わず大きなあくびが出てしまった。
こんな時間まで起きていられるのは、冬休みの学生である今でしか出来ない事だろう。
「にしても、アスカと深雪さん。 まだ戻ってこないな・・・」
あくびをした後の、マヌケ感全開の声で俺は辺りを見回しながら言う。
除夜際が終わり、早々に片付けや着替えを終え、後は家に帰宅するだけになった俺たちを神主さんが呼び止めたのだ。
なんでも、手伝ってくれたお礼がしたいとの事らしいが、ハッキリ言って今しなくても良いのではないかと思う。
「あ、いた。 ゴメン、ゴメン、遅くなっちゃった」
「すみません。 神主さんから皆さんに渡して欲しい物があると言われて、貰ってきたんです」
そう思い始めた時、俺の耳に聞きなれた二人の声が聞こえてきた。
見れば、私服姿で六つの封筒を持っているアスカと、五つの紙袋を持つ深雪さんが申し訳なさそうにやって来る。
「まぁ、いいよ・・・気にしないで。 それで、何を貰ったの?」
最早、抗議する気力もない三人を代表して俺が彼女たちを気遣う。
「えっと、手伝ってくれたお礼にって事で・・・お年玉?って奴。 手伝い料とお年玉を一緒にしてあるってさ」
「ほほぉ・・・?」
アスカから出た言葉に、俺は思わず口元がニヤリと歪み眠気も吹き飛んでしまった。
お年玉、それは子供限定のみ貰える大人たちからの臨時収入。正月の三が日は、これが貰える唯一にして特別な日。

貰えたお年玉の金額を見て、一人部屋でニヤニヤしてしまうのは俺だけではないはずだ。
「あの、信哉様? 顔の表情が悪人のようになっていますよ?」
「おっと、失礼」
深雪さんに指摘され、すぐさま止める。その時、彼女が若干引き気味だったのは気のせいだ。気のせいに決まっている。
「・・・んん、こほん。 私は神主さんからコレをもらいました」
「どれどれ・・・・・・・」
一つの紙袋を渡され、中身を確認―そして、硬直。
袋の中に入っていたのは、ついさっきまで彼女たちが着ていた巫女服。それだけで、あの神主の思惑を察知してしまった。
「渡された瞬間、その・・・“がんばれ”、と・・・言われました」
恥ずかしげに言う深雪さんに、俺は無言で袋を閉じる。
「・・・・帰るか」
「「「「・・・はい」」」」
何かを言う気力もなく、俺たちはそのまま帰路についた。余談だが、すでに寝てしまった麗は恵理におんぶされての帰宅となった。

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