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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 63

「よお!信哉!店の前で何突っ立ってんだ?」
「さ!佐藤何でお前がここに居るんだ!?」
アスカ達と話していると、俺の(元)親友である佐藤がトナカイのコスプレで店の中から出てくる。
「そりゃ、この店俺の親父の店だからな」
そう言うと佐藤は後ろに在る店の看板を指差す。
看板には店名であろう『ブランシュ』という名前の片隅に、小さく佐藤洋菓子店という文字が書いてあった。



何でも佐藤の話によると、去年本場フランスの某名店で長年パテシエとして働いていた父親が帰国し長年の夢だった自分の店を開いたのだそうだ。
ただ、良くも悪くも職人気質な佐藤の父親が作るケーキは、味は確かなのだがお値段が高く、一定の顧客は掴めたものの今一つ業績が伸び悩んでいるという。
「まあ、家は共働きで、キャリアウーマンのお袋がガンガン稼いでるから別に良いんだけどさ。俺は出来れば親父の造ったケーキを大勢の人に食ってもらいたい訳よ」
そこで佐藤が思い付いたのがこのコスプレなのだそうだ。
キャンペーンガールにちょっと男性客の煩悩を刺激するような可愛らしいコスチュームを着てもらい、クリスマスというイベントで派手にアピール、とにかくまずは知名度を上げてケーキを食べてもらう作戦だ。(本人の趣味も多分に入っている気がするが)
「キャンペーンガールもアスカさんたちにお願いすれば、プロに頼むよりずっと安上がりだしな!お陰で今年のクリスマスはガッポリよ!イヤ〜ホント持つべきものは美人のクラスメイトだよな!ハハハハハハ!!!」
(元)親友の調子の良い笑い声に、思わず怒りが込み上げてくるが、目的が親孝行の為怒るに怒れない。
「どうだ信哉?なんならお前も働いていかんか?実は今うちの店忙し過ぎて猫の手も借りたいくらいなんだよ!いくらお前でも猫よりは役に立つだろ?」
(相変わらず調子の良いヤツ)
「・・・良いだろう」
基本世間知らずのお嬢様である婚約者たちだけで働かせるのは不安だったので、俺は佐藤のこの提案に乗ることにした。
同じ場所で働いていれば彼女達を守る事くらい出来るだろう。
「おう!親友(とも)よ!良い返事だ!じゃあ俺は店の中に入るから、お前は彼女達と一緒に外でビラ配りな!・・・ああ、この衣装もお前にやるよ!!」
佐藤はいそいそとトナカイの着ぐるみを脱ぎ捨て、俺にその衣装を押し付けた。
「・・・・」
あれからどの位の時間が経過しただろうか。トナカイな衣装に身を包んだ俺は、アイツの言われたとおりビラを配ったり(自分からしたら)可愛い動きで客を呼び込もうと試行錯誤している。
だが、効果はいまひとつ。
逆に店から遠ざかろうとする人が圧倒的多数を占めている。泣いていいだろうか。

しかし、彼女たちは違かった。

「「「「「クリスマスの夜にブランシュの美味しいケーキはいかがですかぁ! 本場仕込のパテシエが作るケーキは此処だけ! 皆さん、ぜひ一度ご賞味ください!」」」」」
(アスカたち・・・めっちゃノリノリ・・・)
可愛らしいサンタ衣装に身を包んでいる彼女たちの明るい声と輝く笑顔にやられてしまったであろう男性たちが、ぞろぞろと店内に入っていっている。
何やら体の奥底からドス黒い感情が湧き出てくるが、ここはグッと堪え手伝いに没頭する。

(にしてもアイツ・・・・いい仕事してるなぁ!)
横目でチラチラと見ながら、心の中で(元)親友にサムズアップをせざるを得ない。
大変悔しい事だが、アイツは(女性の)ファッションセンスが良い。
今もこうして手伝いをしている彼女たちが着ている衣装も実に似合っている。
そうこうしていると店の中から佐藤が出てきた。
「オウ!皆ご苦労様!おかげで、予想以上の売れ行きでケーキは完売しましたぁ!」
何とまだ夜の六時を少し過ぎた位の時間にも関わらず、在庫を全て売り尽くしてしまったようだ。
「てっ!訳で今日はもう上がってもらって結構です!一応皆の為にケーキをワンホール取っておいたから帰ったら食べてみてくれ!」
さすがに佐藤は如才無い、彼女達の為にちゃんとケーキを確保していたとは。
「まっ、せっかくのクリスマスなんだし、ここからはお互い楽しもうぜ!!」

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