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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 62

『ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る〜♪今日は〜楽しいクリスマス ヘイ♪ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る〜♪』
日々平穏な生活を送っていた俺の前に婚約者である五人の美少女達が現れて数ヶ月が過ぎ、世間はクリスマスムードに包まれていた。
「・・・・・・う〜ん・・・困ったな・・・何を買えば良いんだろう?」
俺は恥ずかしい思いを堪えながらも、可愛らしい女の子向けの品々が並ぶ店の棚の前で頭を抱えていた。
(やっぱり、せっかくのクリスマスなんだから皆に何かプレゼントを買ってあげたいよな・・・でも、女の子へのプレゼントなんて何を買えば良いんだ?)
日本におけるクリスマスはもはや本来のキリストの聖誕祭とは独立したお祭りと化している。
祝う人々もその多くは信仰心など皆無であり、かくいう俺も無宗教で、強いて言うなら家の菩提寺が浄土真宗なので一応仏教徒という事に成るのかも知れない。(まあ、お盆に先祖代々の墓が在る某お寺に御参りするだけのいい加減な信仰なのだが・・・)
とはいえせっかく華やかに彩られ、皆が浮かれている中で、わざわざ屁理屈をこねて陰気に振舞っているのも野暮というモノだろう。
まして去年までとは違い今年の俺は美人の彼女持ちという数多の学生の中でも間違いなく恵まれた位置に座っているのだ。

それゆえに迷う――何をあげれば彼女たちが喜んでくれるのか?

今の今まで考えたことすらない事に、俺は無い知恵を振り絞ろうと孤軍奮闘しているのだ。
「〜〜〜あぁッ! 全然思い浮かばねぇ・・・」
ガシガシと頭を掻き毟り、その場で途方に暮れる俺を周りの人たちは皆怪訝な視線を向けている。
しかし、中には意味深な微笑みを浮かべる人もいるので、心の中で羞恥心指数が秒刻みで上昇していくのを否応にも実感してしまう。
(拷問だ・・・)
耳まで真っ赤になっているのが分かる。俺は、顔を下に向けたまま逃げるようにその場を走り去った。


「はぁ・・・どうしたもんか・・・」
通りを歩きながら呟く俺の声は、クリスマス一色に染まった街の中に白い息と共に消えていく。
ふと何気なく辺りを見れば、そこかしこにカップルらしき男女二人組みのペアが目に入った。
彼ら彼女らは、皆笑顔で会話をしたりショップに入って何かを買っている最中だ。
「・・・」
去年の今頃だったら、「羨ましい」や「リア充、爆発しろ」などといった感情が湧き、それを佐藤や学校内の男子グループと一緒になってカラオケでよく吐き散らした。

だが、今年は違う。自分にも、プレゼントを渡すべき相手ができてしまったから。

「・・・はぁ」
二度目のため息。口からでた白い息が、灰色の空に上がっては消える。
「本当・・・どうしたらいいんだ?」
見上げた空は、雪雲に覆われた灰色の空。

答えなんて、あるはずもない。

「・・・・何してんの?」
「見てわかんない? サンタのコスプレしてクリスマスケーキの売り子よ」
今までシリアスに考えていた自分が馬鹿に思えてしまう光景が目の前に広がっていた。
辺りが暗くなってきたため、街の街灯に明かりが灯り始める。
夜になって、また一段と賑わいを見せる街の一角にソレはあった。

赤と白の二色の上下の服に三角帽子、何処からどう見てもサンタルックなアスカたち婚約者5人がケーキ売りのバイトに勤しんでいるのだ。
これが普通のサンタ衣装だったら別に良いのだが、如何せん目の前の少女達の格好は俺からしたらレッドカードを出せざるを得ない。

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