PiPi's World 投稿小説

“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 43
 45
の最後へ

“リア充”始めました 45

「でもしょうがないよね・・・アスカがそうするって決めたんだから・・・」
俺は諦めた様に項垂れる。
「・・・成程そうでしたか・・・で?信哉様は如何なさるのです?」
「いやどうってアスカが・・・」

パン!!

「私は信哉様が如何なさるのか聞いているのです!!」
先程の結論を繰り返そうとした瞬間、深雪さんの平手打ちが俺の頬を張った。
さすが剣道と薙刀で段位を持っているだけ有って、深雪さんの平手打ちは強烈だ。
「信哉様!まさかこのままアスカさんに何も言わないお心算ですか?」
「いや・・・言うって何を?」
俺のその質問に深雪さんは額に手を当て溜息を吐いた。
「ハァ〜〜良いですか信哉様。何故アスカさんがそんな事を言ったとお思いですか?」
「?」
訳が分からず小首を傾げると、深雪さんは出会ってから初めて、俺に軽蔑したような視線を向ける。
「良いですか!アスカさんは信哉様に引きとめて欲しいと思っているのです!!抱き締めてズット俺の側に居ろと命じて欲しいと思っているのですよ!!」
「いや・・・まさか・・・だって相手はアスカだよ?彼女がそんな・・・」
「解らない人ですね!!例え普段どれだけ強がっていても、アスカさんはまだ十七歳の少女なんですよ!恋する女性は殿方より遥かにか弱い者なんです!!ましてご両親の命令で愛する人と引き離されようとしているのですよ!アスカさんも信哉様に引きとめて欲しい!支えて欲しい!愛していると言って欲しいに決まっているじゃないですか!!」
深雪さんの言葉に俺は今頃に成って衝撃を受けた。
「で、でも・・・」
「信哉様は如何なのです?」
「え?」
「もしもアスカさんを愛しているなら、今すぐ抱き締めて行くなと言ってあげるべきです!逆に別に愛しては居ないなら、ちゃんとお別れを言ってあげるべきでしょう!それが殿方の責任であり、アスカさんへの思いやりです!さあ!信哉様は如何したいのです?」
「お・・・俺は・・・」
俺は深雪さんの言葉に自らの心に問いかけた。
「み、深雪さん・・・俺・・」
俺が自分の心を声に出そうとしたその時。
深雪さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべて俺の唇をそっと指で塞ぐ。
「その続きはアスカさんに直接言ってあげて下さい・・・彼女は多分三丁目の公園に居るハズですから・・・」
「うん!ありがとう深雪さん!!」
「フフフ・・・まあ今回は敵に塩を送ると言った所ですね・・・あと最後に信哉様の正妻に成るのは私だという事をお忘れなく」
俺は彼女の言葉に苦笑を浮かべると、ジャケットを羽織り、三丁目の公園への道を全速力で直走った。



(アスカ・・・)
満月の夜、冬の様に寒い夜空の下、吐く息が白くなりながらも俺は足を止めることはない。
そして、心の中で呼ぶ名前はただ一人。
何時もは、俺を罵ってばかりの癖に、いざとなると頼りになる赤毛の少女。
(アスカ・・・アスカッ!!)
何度も、何度も繰り返し思う。始めは疎ましく思っていたが、今は掛け替えのない大切な存在。


「・・・アスカ」
「・・・ッ!!」
公園のイス、点灯に照らされた広場の隅に置かれた長いす。
其処に、一人体育すわりで頭を膝につけている少女。
息が切れながらも、名前を呼ぶと少女はビクリと体を震わせた。

「・・・何で来たのよ・・・」
体育すわりのまま、高圧的な口調で聞いてくる彼女。
「何って・・・連れ戻しに来たんだよ」
そんな彼女に、どこかホッとする俺。そして、いつもの様に呆れた口調で答えた。
「連れ戻しに? あんた、バカ? あれだけ、邪魔者扱いしてたくせに?」
その答えに、彼女はさらに見下すような口調で俺を罵る。
「邪魔者・・・って、まぁ・・・うん、何だ・・・」
彼女の言った言葉に、俺は後頭部をガシガシと齧りながら茶を濁す。
「ほらやっぱり。 だから私直々に出て行ってあげたのよ? 感謝しなさい」
俺の態度が分かったように、キッパリと彼女は言う。
「それは出来ない」
「・・・」
そんな彼女に、俺もハッキリとした口調で答える。返答は、帰ってこない。
「俺は、お前を見合いに行かせたくない」
「・・・何で?」
続けざまに言う俺に、彼女は聞き返す。その口調は、とても弱弱しかった。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す