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“リア充”始めました
官能リレー小説 - その他

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“リア充”始めました 40

パン!

「「「「わ〜!わ〜!」」」」
学校のグラウンドに鉄砲の音が響き渡り、ランナーたちが一斉に走り出す。
「「「「イッケェ〜エリー!!」」」」
その中の一人に俺の婚約者である豊橋恵理(トヨハシ エリ)が混じっている。
この二百メートル走は、各クラスで最も足の速い人間が代表として出ているハズなのだが、そんな運動神経に優れた人々の中に有っても、恵理の運動能力はずば抜けている。
彼女が走っている姿は、まるで野生のチーターのように凛々しくしなやかで、女子としては短めに切り揃えられた髪が、風でなびき、ある種の神々しささえ感じられる。
「「「きゃ〜エリーお姉さま〜!!」」」
彼女は中性的な顔立ちと、女性に優しい(男には厳しいが)性格で、女の子が困っていると積極的に助けようとするので、高校の女子生徒たちからアイドル視されており、校内にファンクラブまで有るらしい。
恐らくあそこで恵理に黄色い声援を送っている少女たちは、恵理のファンクラブのメンバーたちだろう。
(因みに俺の婚約者達には、知らない間に全員のファンクラブが出来ているそうだ。もっともファンの割合が、男子生徒より女子生徒の方が多いのは、さすがに恵理だけらしい)
そうこうしている間にも、恵理は他のランナーに圧倒的な差をつけ、ゴールに飛び込んだ。
「やっほう!どうだシン!また一位だぞ!!」
恵理はまるで子犬が褒めて貰いたいと飼い主に飛びつくように、一着の旗を持った俺の胸に飛びつくと、笑顔で両手を広げながら、俺の胴を抱き締めた。
「こ!こら!抱き着くな!!」
「えへへ・・・ねえシン!褒めて!褒めて!」
「はいはい・・・」
俺は仕方なくじゃれついて来る飼い犬にそうするように、彼女の頭を撫でてやる。

首の辺りでそろえた黒のショートヘアー、撫でてやるとサラサラとした感触が手のひらいっぱいに支配する。
その余りのさわり心地に、ついつい撫でることに夢中になってしまった。
「んん〜・・・シン♪」
「はぁ・・・まったく・・・って、はッ?!」
俺の手のひらに、頭をこすり付けて甘えてくる恵理。その様子は子犬そのもので、俺も口が自然と微笑みかけた瞬間、背後から流れる不穏な空気が流れてくる。
「「「「・・・・・」」」」
ガン見だ。振り返ると、其処には女子と男子の団体が一様にジト目で此方をガン見している。その比率は7対3で女子が圧倒的に多いのは気にしない事にしよう。
「信哉・・・・ちょっっっっっと、こっち来ようか」
ガシッ!、と俺の肩を強く握り締めるてニッコリとする佐藤。しかし、その目は一ミリたりとも笑ってはいない。
「は、ははッ・・・どうした、親友? そんな『次は、男子二百メートルです・・・』あッ、次俺の出る番だ!」
「おのれぇ・・・・この学園の敵がぁぁぁぁぁッッッ!!!」
ドスの利いた佐藤の叫び声を背中で聞きながら、俺は逃げるようにスタート場所へと走っていった。

「位置についてぇ・・・よーい・・・」
――パンッ!
「「「うおぉおぉぉおぉおぉッッッッ!!!」」」
スタートと同時に、俺の左右から凄まじいまでの雄たけびを上げながら走り出す男子生徒。そのあまりの凄さに、俺は一瞬スタートが遅れてしまった。
背後から感じる嫉妬と殺意のオーラもプラスされてか、男子のやる気が既にマックスだ。
「こらぁーッ! 何やってんのよこのバカッ!」
「お兄様ぁー! 頑張ってくださぁーい!」
「信君、ファイトーッ!」
「信哉様、頑張ってください!」
そんな空気を知ってか知らずか、俺を応援するアスカたち。
(やっぱ、此処は一番でしょッ!)
最近になって、少しだけだが彼女たちの存在を認めつつある俺。だったら、将来の嫁さんたち(?)には格好悪い所は見せる訳には行かない。
俺の心に闘志の火が燃え上がる。
「位置についてー!よーい!」

パン!

俺はその音と同時に一陣の風に成った・・・・

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