神願い!! 5
それでも耕哉が漣家に関する何かを持っているのか?…と疑問にもなる。
どうせあいつのことだから、発掘家の弘和さんを鑑定士と間違え、まがい物の骨董品でも鑑定を頼みに来るんだろうと、呑気に構えてしまう。
終礼が終わり放課後になった。
掃除当番だった俺は皆より遅れて下駄箱に行くと、案の定、耕哉が俺が来るのを待っていた。
「これからお前ん家、いいだろ?…」
"いいだろ?"って;…
俺が断らないと分かった上で甘えてくるのが、耕哉のいつものやり方だよな;…
こちらは男の二人暮らし、いつ家に行っても特に不便はない。
それに弘和さんはマスコミや発掘業者が家に寄り付かないようにしているからますます都合がいい。
そういえば、耕哉が家に来るのは初めてだったな…。
まあ耕哉と言わず、俺の友達がこの家に来るのは初めてだ。
やっぱ弘和さんは発掘に出掛けていない時はほとんど家にいるから、遠慮があるからね。
だから耕哉みたいに自分から強引に行くと言われないと、俺からはとても誘えなかったりするから、よかったと言えばよかったのかもしれない…
「漣弘和さんはいるのか?」
「どうだろ?…多分いるとは思うけど…」
正直、よくわからない。人が家に来るなんて予定はなかったから考えもしていなかった。
とりあえず弘和さんの迷惑にはならないだろう、屋敷は広いから1人増えたくらいで騒がしくはならない。
耕哉は着替えてから家に来るらしい、まさか泊まる気じゃなかろうな。
そんなことは無いだろうと思いながらも、どこかでそうあって欲しいと思ってしまう。
子供の時、普通の生活をしている周りの友達は、互いの家でのお泊まり会はよくあることだった…
しかし施設での生活ではそれを許しては貰えず、俺はちゃんと親のいる子を羨ましく思っていたのだ。
それを高校になった今でも、どこか引きずっている自分がいるのは分かっていた。
それでもこの歳にもなって、"自分の家に泊まって欲しい"なんて言ったら、きっと気持ち悪がられるだけだろうと…諦めていた。