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龍の一族
官能リレー小説 - その他

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龍の一族 9

和人の前に現れた役人は二人。
一人はいかにも“役人です”といった風情の中年の小男で、奈良時代の官服を思わせる着物にヒョロッとしたドジョウ髭を生やしている。
もう一人は意外にも若い女性であった。
日向と名乗った彼女は、二十代初めくらいに見える美しい女性で、髪はポニーテール(というか髷)のように後ろでまとめている。
日本と中国の鎧を足して二で割ったような甲冑に身を包み、腰には太刀を下げていた。
あとは護衛の兵士と思しき者達が十人ほど…。
和人は思った。
(俺一人の護送にしちゃあ随分と大袈裟だなぁ…てゆうかこの日向って女の人の胸、桃花よりデカいんじゃあ…)
見まい見まいと意識しても自ずと視線が向いてしまう。
そう、日向と名乗った女武官の胸元には鎧の上からでも判る巨大な膨らみが二つ並んでいた。

「…ウォッホン!ではこれより貴様を国府まで護送するゆえ、あれに入ってもらおうか」
エラそうに咳払いして八代が指差した先には、時代劇などで良く見る罪人を運ぶ時に使う籠があった。
「マ…マジで罪人扱いなのかよ…(ヤバいなぁ…正直『誠心誠意弁明すれば解ってもらえるはず』と思ってたけど、こりゃあマジで死刑あり得るかも…)」
「和人ぉ…!」
桃花が泣きながら抱き付いて来た。
「桃花…俺なら大丈夫だ。心配しないで…」
和人は自分の胸に顔を埋めて泣きじゃくる桃花を抱き締める。
「グスン…これ、私だと思って持ってて…」
そう言って桃花は綺麗な蒼い色をした勾玉(まがたま)を和人に渡した。
紐が通してあり、首に掛けられるようになっている。
「ありがとう…桃花」
そして和人は捕らわれの身となり、裁きを受けるため国府なる場所へと向かった…。

「あの〜、すいません。国府って何日ぐらいで着くんですか?」
籠に揺られながら和人は横を歩いている兵士に尋ねた。
「そうじゃのう〜、馬を飛ばせば一日じゃが、歩きとなれば三日は掛かるぞ」
八代という役人は無駄に居丈高だったが、下っ端の兵士達は気さくだった。
日向も威張り散らすような態度こそ取らないが、どことなく近寄り難い雰囲気がある。
兵士達の言葉使いは村の人達と似ていた。
恐らく農民が徴募されて兵役についているのだろう。
八代と日向だけが馬に乗り、あとは徒歩だ。
和人の籠は人夫が二人がかりで運び、時たま交代した。
乗り心地は…お世辞にも良いとは言えなかった。
(それにしても初めて村の外に出たけど、ここが異世界だっていう決定的な証拠にまだお目にかかって無いよなぁ…もしかしたら日本のどこかの山奥って可能性も…そうだよ、あの曲がり角を曲がったら送電線の鉄塔が見えてきたりして…あるいはアスファルトで舗装された道路が出て来たり…)
…と、そんな事を考えながら角を曲がった途端、一行の目の前に信じられない物が出現した。

「りゅ…龍うぅ…っ!!!?」
和人は思わず叫んだ。
そう、彼らの目の前に現れたのは、元居た世界では空想上の生物とされていた、龍、竜、辰、ドラゴン、と呼ばれる動物だったのである。
龍は悠々と空高く飛んでいた。
「天龍じゃあ」
「見事なもんじゃのぉ〜」
兵士達はまるで虹でも見えたかのように呑気に語り合っている。
「えぇぇっ!!?何あれ!!?何であんなの居るの!!?誰かドラゴ○ボール集めたの!!?」
一方、すっかり興奮状態の和人に日向は半ば呆れ顔で言った。
「少し落ち着け…何を言っているのかサッパリ解らんぞ。龍を見たのは初めてか?」
「いや、あんなのが存在している事自体知らなかったですよ!!…やっぱり異世界だったんだなぁ…」
「ふぅん…龍を珍しがるとは…やはりそなたは変わったヤツだな」
…と次の瞬間、日向はハッと何かに気付いて近くの茂みへと視線を移した。
「…しまった、龍に気を取られて油断していたようだ。囲まれた」
「え…!?」
茂みをガサガサと掻き分けて、武装した男達が姿を現した。
彼らの武器や鎧は国府の兵士達のように統一されてはいないし錆びて刃こぼれしている。
数はこちらの倍以上だ。
八代が叫んだ。
「さ…山賊じゃあ!!!」
兵士達は慌てて槍を構えるが、及び腰で手が震えている。
賊の親玉と思しき眼帯をした髭面の男が言った。
「へへへ…てめぇら、素直に言う事を聞きゃあ楽に殺してやるぜぇ…さぁ!身ぐるみ差し出せぇ!」
「そうはいくか…はあぁっ!!」
日向だけは勇猛に太刀を抜いて馬を飛ばし、親玉に斬りかかって行った。
 ガキイィィンッ!!!
刃と刃がぶつかり、火花が飛び散る。
「ひ…日向様に続けえぇ!!」
「「「お…おう!!!」」」
兵士達も槍を構えて各々山賊達に突っ込んだ。
たちまち起こる剣戟の響き。

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