龍の一族 1
ーー明鏡止水ーー
今の彼、龍ヶ峰和人(りゅうがみねかずと)はまさにその言葉一つに尽きる状態である。広い道場に一人胴衣に身を包んだ彼はこの状態を2時間以上保っているのだ。
「和人、わしはお主が末恐ろしいわい・・・」
物音一つしない世界に一つの声が響き渡る。そして、道場に姿を現したのは、彼の祖父であり師の龍ヶ峰元帥(りゅうがみねげんすい)である。
彼はこの龍ヶ峰家の24代「天覇二刀流」の現当主である。その当主が今目の前で正座で黙想している和人に喜びと畏怖が混じり合った声で彼を称えたのである。
「もう、祖父ちゃん。そんな事を言うために此処に来たわけ?」
黙想を止め、正座のまま彼は祖父の正面を向く。彼こと龍ヶ峰和人は高校2年にして、天覇二刀流の正統後継者である。しかも、その腕前は祖父の元帥を負かしてしまうぐらい。
よって
「今日からお主を天覇二刀の25代目にすることを任命する」
そう、元帥が和人に言うと彼は道場の奥にある、刀掛けに置かれている二本の刀を和人の前に置き
「これが、我が龍ヶ峰家天覇二刀流当主の証、“秋水”と“白夜”じゃ」
全体が黒い方が秋水、反対の全体の白い方が白夜であろう。すると和人は嬉しさのあまり、年相応の笑顔になり
「ありがとうございます! 祖父ちゃん!!」
「かっかっかっ! そんなに嬉しいなら、早いとこ孫の顔を拝ませんか!」
そう言う祖父に和人は顔を赤くしながらもジト目で睨み付ける。
「あのねぇ、祖父ちゃん。 俺なんかに好意を持つ女の子がいるはずないだろう?」
「お前、それ本気で言ってるのか?」
そんな事を言う孫に元帥は信じられない、と言う風な表情で聞く。すると、和人は何を言ってるんだと言う顔にあり、元帥は頭を抱えそうになった。
「おっはよー。 カーズト!」
「おっすー。(ドカァ!)」
と、朝の登校の途中、彼の悪友である佐々木亮を殴り倒した和人は、何事もないような風で学校に行こうとしたが
「待てやぁぁぁぁ! 親友殴り飛ばしてなに無視してんだ!!?」
と、即復活した亮に絡まれまがらも、和人は“普通の日常”を暮らしていた。
ーー放課後ーー
和人は家に帰るためにいつもの道を通っている時・・・
ーー時は来た・・・−−−
「え・・・?」
ーー龍の末裔よ・・・。“あの世界”を頼んだぞ・・・