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龍の一族
官能リレー小説 - その他

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龍の一族 23

それを見ていた日向は言った。

「では、作戦会議だな」
「作戦っつってもよ…和人が囮になって、出てきたあやかしをオレらで捕まえんだろ?」
「なら簡単よねぇ。村の殿方の仕事着、借りられますぅ?」

椿と桔梗が相次いで言った。

「俺が野良仕事して、釣るわけだ」
「できんのか?野良仕事」
「一応、捕まる前に少しは」

桃花と暮らしていた村で、和人も畑仕事はしていたからそれらしく振舞う事は可能だろう。
というより、和人としては男手不足で荒れた畑を少しでも直して村を助けるくらいでないと、釣り餌の役目は果たせないと考えていた。

ざっ、ざっ…
畑を耕す、一人の若い男がいた。言うまでもなく和人だ。体格の似た村の男性の服を借り、農作業に精を出していた。
少し離れた場所では、別の農婦が畑仕事をしている。
また別の場所では、老農夫がこちらも畑仕事をしていた。
そして、近くの農家の牛小屋では、椿が牛の世話をしていた。

「早く釣れてくれると良いのだがな…」
「気長に待つしか、ないんじゃなぁい?」
「む…そうだな」

日向と桔梗は、近くの農家に身を隠し、和人の様子を見ていた。あのあやかしが現れたら、即座に取り押さえるために。

「なかなか現れねーな…」
「そうだね」

野良仕事の休憩で、水を飲んでいた和人の横で椿が言った。

「椿って、牛の世話上手なんだな。ちょっと意外だった」
「そ、そうか?一応、生まれた家では世話してたからな」
「そうだったんだ」

どこかもじもじとした様子でいる椿といると、和人も少し胸が高鳴る。
椿はさらしの巻き方を変えて、胸を潰さないように、胸の重さを支えるように巻くようになった。当然、横にいる和人にも、椿の胸の谷間が見えるわけで…

「あ、あんまし見んなよっ」
「ごめん」

ただ居るだけでは疑われるので、屋内の作業や、食事の用意をしていた日向と桔梗。
家の中からも、和人と椿が座って休息している様子を見ていた。
和人達の様子を面白がる桔梗と、緊張感を失わない日向。

「初々しいわぁ」
「そうかもしれんな」
「あら、妬いてる?」
「気を抜いていないだけだ。お前こそ、薪の補充してこい」

「はいはい。持ってきますよ」

どこか気だるげな、退廃的な色気を漂わせながら、裏手の薪置き場に回る桔梗だった。
それから、また畑仕事して、日暮れ時には日向達が作った夕食を食べた。
この時代の農家の夜は早い。
明かりを灯す油や蝋燭は値が張るので、日が暮れたら眠り、日が昇れば起きて働く、そんな生活なのだ。
結局この日は、何事もなく過ぎていった。

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