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龍の一族
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龍の一族 21

かわいい…
正直そう思う。

「その方が可愛いです!」
「え?え?オマエ何を…」

どぎまぎする椿の手を取って、一気に語りかける和人。

「椿さんは充分素敵なんですから、無理に自分の体を隠さなくってもいいんです!」
「そ…そうか?」
「ホントですよ!」
「和人の言う通りよぉ。今のアンタは可愛いって」
「そっか…うん、そっか…勇気出してみて…よかった」

桔梗も入ってきて、どこか楽しさと軽い怠さを漂わせた口調で言った。

「皆様、朝餉の支度ができております」
「「!!」」

昨日裸で迫ってきた女将さんが、昨夜のことなど無かったかのように表れた。

「いただくとしよう。和人、桔梗、椿、行くぞ」
「あ、はい」

その朝食の席上、日向が問う。

「して…母方山のあやかしについてだが、昨日は遅かった故聞けなんだ。よってどのような代物なのか知る限りのことをお聞かせ願いたい」
女将さんが、鉛を飲んだように重い表情になった。それでもゆっくりと口を開いた。

「…はい、美しい女性の姿をしており、男の人が一人で何かしている所に現れては、そのまま誘き出してしまうのです」
「美しい女性…と申されたな。奴の姿を見た者はいるのか?」
「私を含め、何人か。男の人が惑わされ、ふらふらとついていっている所を見た者がございます」

日向の更なる問いかけに、女将さんは自身も目撃したと語る。

「声かけて、呼び戻せ……はしないか」
「妙な綺麗な女性ですので、彼女がどこのどなたなのか聞いてみても暖簾に腕押し。惑わされた男の人に聞いても、夢うつつの中にいるかのようなありさまで、呼びかけに答えないのです。慌てて追いかけても、共に山の中に消えてしまい、そのままふっつりと……」
「で、男の人が一人、また一人といなくなって、うちのおとうやお兄も、いなくなったのよ」

顔を覆ってしまった女将さんの後を、いつの間にか来ていた昨日の少女が引き取った。
まだ彼女は和人のことが気に食わないのか、睨むような眼で彼を見ていた。

「そうだったのか…辛いことを聞いて、本当に済まない……」

日向も沈鬱な表情で頭を下げ、和人たちも続いた。
だが、日向もまだ話を終えるわけにもいかないのだった。沈鬱な表情のまま、懇願するように話を続けた。

「だが、どうかもう少しだけ答えてほしい……。
かどわかされた男が、木乃伊になって発見される事もあると聞いたのだが……」
「それは……」

少女がそれだけを言って絶句する。重い沈黙が流れ、ようやく女将さんが説明を始めた。

「まるで搾りかすのような、干からびたありさまで、麓に遺体が出る時があるのです。
もう、この村や近くの村では、姿を消した男の人の三分の一近くがそのような無残な姿に……」
「三分の一ですか?もうそんなに…!」

あまりの数に、日向よりも和人が驚いた。
黙って頷く女将さんと少女。

重い沈黙が支配する中、もう一刻の猶予も無いな……と、そう誰もが思った。
沈黙を破ったのは、和人だった。

「どうやら、俺が囮になるしかないみたいだね」
「そんな!あぶのうございます!」
「男を狙ってくるなら、ほかに手はないと思う。それと、まだ惑わされて連れていかれていない男の人は、全員どこか他所に疎開させて欲しい」

和人が決然と言うと、女将さんが反対したが、日向達は仕方あるまいという顔で頷いていた。

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