龍の一族 20
「とにかく、寝るか…」
夜も遅い。明日の朝も早いし、寝ることにした。
念のために周囲の気配も探るが、さらに別の村人がいる様子も無い。
※ ※ ※
和人は夢を見ていた…。
ーー龍の末裔よ…。
「またか…」
この世界へ来る直前、そして山賊との戦いの時に聞いた声…男なのか女なのか、若者なのか老人なのかも定かではない…。
「またあんたか…?」
その声は答えた。
ーー汝この世界に参りてより人々から受けし恩、忘れずに返せ…。恵を受け、与えよ…縁を接ぎ、形と命もて残せーー
「縁…受けし恩…?俺は連れてこられたのでは…?」
だが、それに対する答えを聞く前に彼は夢より覚めてしまった…。
「朝か…」
小鳥のさえずりが聞こえる。
襖からは陽光が染み透る。
とにかく…あやかしをどうにかすることが先決だよな。
昨日のお姉さんとその姪らしい娘の事もあるし、ちょっともったいない気もするけど、やらないと俺も罪に問われる。桃花に会えなくなったら悲しい…
そこまで思っていると、外から何やら気配がした。
澄み切った煌めきのような気配だ。
襖を開けて朝日さす廊下に出ると、庭で日向が素振りをしていた。
「おや、和人殿。お目覚めかな」
「あ…おはようございます」
(やっぱし見事だよな…)
和人は心の中でニヤニヤしてしまう。
日向の素振りの美しさ、そして弾む胸。
そして、向こうからやってくる人を見て和人は驚いた。
「ふわぁ…よく寝た…いい朝ねぇ〜」
「おはようございます。桔梗さん…って!」
あくびしながら現れたのは、桔梗だった。
涙嚢から押し戻された涙が目元にちらりと見えていたが、その色っぽさよりも和人が驚いたのは、桔梗がだらしなく着崩した寝間着の胸元が大きく開き、すぐ近くまで来た時にはぼろんと飛び出したのだ。
「おいおい、ここは私達だけだからいいが、だらしないぞ」
「あらあらぁ〜。ふふ」
(すげえ…それに、恥ずかし気も無い…)
苦い顔になった日向に注意され、しまい込むのが惜しいかのようにのろのろとおっぱいをしまい込む桔梗だが、しまい込んだ後も寝間着の胸元が思いっきり張り詰めて深い谷間をほぼすべてさらけ出していた。
「ところでぇ、和人ぉ、夕べは楽しんだ?」
「えっ?」
和人は微妙に気まずい気持ちになる。
ここの従業員の女性たちとちょっとトラブルになったから。
「それとも、私の胸ばかり見てるって事は楽しめなかった?」
「そういうのは、無かったですよっ」
思わず慌てて否定してしまい、動揺しているなと自分でも気づいてしまう。
「それくらいにしろ。和人殿は昨日湯あたりしていたではないか」
「そ、そういえば椿さんは?」
日向がたしなめてくれたので、これ幸いと別の話題を振る和人だった。
その返事は背後から返ってきた。
「おれがどうした?」
「ああ、椿さん。おはようございます…あれ?」
おそらく用を足していたのだろう。彼は椿の来た方向には厠があった事を思い出す。
「無理に押さえつけるの辞めたんですね」
「まあ…その、きついからな。…揺れない程度に支えておけば、動いた時…痛くも無いしな」
椿の胸元を見ると服の懐にはさらしが見える。巻き方を工夫したらしい。
横を向いて、ほほを赤らめた椿はとつとつと語る。