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龍の一族
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龍の一族 13

そう言うと日向は「ハァ…」と小さな溜め息をついた。
いわば本社に帰る事ばかり考えていて、業務にさっぱり身の入らない、やる気の無い出張所の所長みたいなもの…そんなヤツの下で働くのは確かに嫌だ。
それはそれとして、街の方は賑わっていたし、治安も悪くなさそうだった。
統治の方は滞りなく行われているらしい。
どんな阿呆がトップになっても大丈夫なように法や行政がしっかり機能しているのだろう。

和人はお白州(しらす)の中庭に引き立てられた。
やがて国司と思われる男が部下の役人達を伴って現れた。
「はぁ〜、面倒臭いのう…さっさと終わらせて遊廓にでも遊びに行きたいわい…」
「んなぁ…っ!!?」
国司の顔を見た和人は驚いて開いた口が塞がらなかった。
「あ〜、お前か?恐れ多くも勿体なくも龍皇様の姓を名乗る大馬鹿者というのは…」
「ちょ…ちょっと待てえぇ!!何でお前がこんな所に居るんだよ!?亮!!」
なんと、国司は元居た世界での彼の悪友・佐々木 亮であった。
役人の衣冠に身を包み、笏(しゃく)を持って偉そうにしているが間違いなかった。
「りょお?何を申すか!我はこの水見国(みなみのくに)が国司、淡伊 御門守 凸麿(あわい ごもんのかみ でこまろ)である!“りょお”などという者ではない!」
「し…失礼しました…(これは…ひょっとしてアレか!?異世界トリップ物で良くある“そっくりな他人”ってヤツか!)」
亮…もとい凸麿は渡された書類に目を通しながら言った。
「え〜…報告によるとソナタは約ひと月前に領内の村に現れ『自分は異なる世界から来た』『元居た世界では龍ヶ峰という姓は特別な意味は無い』などと言って村に住み着いたそうだな?間違い無いか?」
「…はい、間違いありません」
「うむ!では龍ヶ峰和人よ、貴様を皇家に対する不敬の罪で死罪とする!!」
「えぇぇっ!!?俺には弁解の機会すら無しっすか!?てゆーか死罪って厳しすぎない!?」
「うーん…じゃあ流罪」
「“じゃあ”って…そんな軽い物なのかよ…」
すると日向が凸麿に近寄って耳打ちした。
「国司様、実はこの者は…」
「…なに!?右手から漆黒の刀を出現させた!?ふぅ〜む…それは少し興味深いな…」
凸麿は和人に尋ねた。
「そなた、ひょっとしてもう一振り…白き刀をその身の内に隠し持ってはおらぬか?」
「白い刀?それって“白夜”の事ですか?白夜は秋水とワンセットで俺の家に代々受け継がれて来た家宝ですが…でも昨日俺の手の中から出て来たのは秋水だけです…」
それを聞いた役人達はザワザワと騒ぎ始める。
凸麿は言った。
「あい分かった!この者の処刑は一旦中止じゃ!評議の上、追って沙汰を下すゆえ、それまで牢に入れておけ!」
「「「ははぁーっ!!!」」」

「…どういう事なのかサッパリ訳が解らないな…」
牢に入れられた和人は一人つぶやく。
とりあえず殺される心配は無くなったと思って良いのだろうか…?
「おい、飯だぞ」
ちょうど兵士が食事を持って来たので和人は尋ねてみた。
「あのぉ…俺、これから一体どうなっちゃうんすか…?」
「さぁ〜、ワシら下っ端には何とも言えんなぁ。いずれにせよ、お前さんがこの扶桑の国の救い主となる人物か、それともただの気狂いか、いま上の方々が話し合っておられるよ…」
「救い主!?俺が?どういう事ですか?」
「なんだ、お前さん知らねえのかい?『この扶桑の国に危機が訪れる時、白と黒の双刀を携えた龍神様の眷属が現れて国を救う』っていう、子供でも知っとる古い言い伝えさ」
「龍神の眷属…?」
「龍神様ってのはこの世の始まりに世界の全てをお創りになった尊い神様だ。今この国を治めておられる龍皇様も、元を正せば龍神様の眷属が地上に降りて来て国をお開きになった…その末裔でいらっしゃる」
「そんな…!!それじゃあ俺は神様の使者で、この国の運命に関わる救世主かも知れないって事ですかぁ!?」
「いや、ワシに訊かれても困るんだけど…あ!でもお前さんが本当に救い主様だったら、ワシ“救い主様が牢に入れられた時に世話をした男”として手記を書いて売り出しちゃおっかなぁ!なぁ!これって売れると思うか!?」
「知るか!!」

翌日、和人は再び牢から出され、昨日と同じお白州の中庭に連れて来られた。
国司・淡伊凸麿は言った。
「龍ヶ峰和人よ!そなたが龍神様の眷属か否かを見定めるため、そなたに試練を与える事にした!」
「試練!?」
「ここより北方四里。母方山という山がある。この山の麓に、あやかしの者がいて近隣の村々の男を攫っているらしいのじゃ。これを解決して参れ!仔細は日向を同伴させる故、聞くがよい!」
「はっ!」
国司の言葉に日向は平伏した。
「解決すれば、俺は無罪放免なのか?」
「左様じゃ。」
凸麿は鷹揚にうなずいてそう言った。
だが、横の日向の様子を和人がうかがうと、かなり緊張、いや緊迫した面持ちである。

1時間後。
旅支度をしながら、和人は日向に説明を求めた。
「その、『母方山のあやかし』って何なんだ?」
「正体は判然としないが、噂では女のあやかしらしい。攫われた男は行方知れずになるか、見つかっても既に木乃伊となっているかのいずれからしい。」

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