侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 95
『私を可愛がって下さい』
「・・・あぁ。良いぜ。だけど、瑞穂は良いのか?」
『瑞穂も愛しておりますが、今は貴方様に愛されたいのです』
「・・・良い言葉だ」
狼鬼はくすり、と笑って朱美の頭を撫でながら静の唇を奪った。
ただ重ねただけの口付けだった。
唇を離した静は、再び狼鬼の耳元で囁いた。
『朱美も抱いて良いですよ』
「俺は幼児愛好家じゃないぞ」
『良いではありませんか。何れは朱美も貴方様の妻にさせる積りです。ですから、その予行練習をさせましょう』
母親としてどういう心境なのだろうか。
などとは狼鬼は微塵も思わなかった。
長い年月を生きて、色々な人物を見てきた。
静と似たような事を発言した者も居る。
自分の妻である鈴鹿も娘である沙耶を妻にさせてくれ、と言うのだから。
彼には幼児愛好趣味は無い。
鈴鹿の前夫、主善にはその気があったらしいが。
だが、静の言う通り予行練習をするのも悪くないと思った。
まだ幼いが将来は美人になるだろう、美貌を持っている。
その半面で身体は既に大人に成り切っている。
幼児愛好家でなくとも男なら抱きたいと思うだろう。
だが、静の言う通り予行練習をするのも悪くないと思った。
「親子揃って・・・男を惑わす身体をしているな」
狼鬼は苦笑しながらも、その身体に惑わされるのも一興と思った。
「理緒は・・・」
そう口にして狼鬼はニヤリと笑う。
「理緒は、俺を墜とすと言っていたぞ。」
「まあ?!。」
驚いた表情の静だが、楽しそうな笑みも同時に浮かべる。
「では、私もうかうかしてられませんわ。」
そう微笑む静に、狼鬼は苦笑を浮かべた。
「おいおい、理緒はまだ子供じゃないか?。張り合ってどうするんだ。」
そんな風に言う狼鬼に、静は心から楽しそうな表情で笑う。
「あの娘だったら、本当に狼鬼様を虜にしてしまいますわ。」
静の表情を見ると、狼鬼と理緒のやり取りを楽しんでる風がある。
それは、狼鬼に理緒を抱いて貰いたいと願っているからなのは狼鬼にも解る。
ただ、静が今までの女と違うのは、狼鬼に気に入られようと娘を差し出すのではなく、娘と共に抱かれたいと言う所である。
それが静なりの娘に対する愛情表現らしく、狼鬼はそれが面白い所だと思った。
「理緒や朱美まで俺に相手させて、瑞穂はどうするつもりだ?。」
狼鬼の問いに静は笑みを浮かべたまま言う。