侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 113
おいおいと狼鬼も言いたくなく言葉だが、あえて口は挟まない。
二人も身体でと言われて少し赤くなるが、そのまま静かに母の言葉を聞く。
「日々精進して狼鬼様が満足されるよう励みなさい。」
「「はい、お母様」」
まるで剣の修行にでも出すような口調で静は言う。
自分が行けぬから娘に託した思い。
理緒はあらかた理解していたし、朱美もなんとなく理解してるようだった。
次の日、狼鬼と水月、理緒、朱美の4人は旅に出た。
「向こうで仕事が片付いたら迎えに来る」
それまでにそちらも仕事を片付けておけ、と狼鬼は暗に言った。
「はい。では、お気を付けて・・・・・」
静は宿の前で狼鬼に一礼した。
狼鬼はそれを一瞥して背を向けた。
短いやり取りだが、二人にはこれで十分だ。
それだけ心が繋がっている。
横で水月は僅かに嫉妬しながらも、自分も何時かなってみせると思った。
理緒と朱美は静に笑顔で手を振り後を付いて行く。
それを静は黙って見ていた。
「・・・さて、私も頑張って瑞穂を種付けしないと」
2、3年は掛ると狼鬼は言った。
マーズの話では子が育つのは通常よりも早いと言う。
2、3年もあれば、瑞穂を自分の後継者に育てる事は可能だ。
それに子も育つ。
ならば、それまでに子を宿させて、身辺整理を済まさなければならない。
そう思い、静は鬼門堂へと足を向けた。
侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 完