侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 1
虎太郎は依頼を終えて、愛する者たちの待つ家へと帰る途中であった。
「もう直ぐ帰るでござるよ」
愛する者たちの顔を思い浮かべながら、虎太郎は足を急がせる。
しかし、途中で胸を抑えて、蹲る女性を見つけた。
生来の性格からか見て見ぬ振りは出来ずに話し掛けた。
「どうしたでござるか?」
優しく話しかけながら、背中を優しく撫でる。
「む、胸が苦しい、です・・・・・・・」
女性は、胸を抑えながら、苦し気に答える。
「な、何と。それは一大事!!」
虎太郎は、慌てて女性に肩を貸し、何処か民家は無いか探し始めた。
かなり時間を掛けて民家を見つけた虎太郎。
「びょ、病人が居るでござるっ」
民家に居た若い娘は、肩を貸している虎太郎と女性を見る。
「まぁ大変。直ぐに横にしないと」
娘は慣れた手つきで、女性を布団の上に寝かし付けた。
「貴方は、急いで水と医者を呼んで来て!!」
娘は虎太郎に命令を下す。
虎太郎は直ぐに頷き、走り出した。
『静、瑞穂、理緒・・・・暫く帰れそうにないでござる』
女性が完治するまでは、傍に居ようと既に虎太郎は決めていた。
それ故に、愛する者たちに心から謝罪した。
しかし、虎太郎はこの後の出来事をまだ知らない。
ここで新たな出会いがある事を。
そしてここで虎太郎は生涯を終えると決める事を。
虎太郎が居ない間、静は、ある“物”に取り付かれていた。
西洋から伝えられた“黒く長い棒”である。
その棒は、自己の意思を持ち、女を快楽に導く。
その棒を静はメイド服を買った時に手に入れた。
そして、虎太郎が居ない間に取り付かれた。