PiPi's World 投稿小説

侍物語〜サムライストーリー〜 第二部
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 82
 84
の最後へ

侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 84

しかし、狼鬼はそれを避けた。

「どうしてもやるのか?」

「えぇ」

「・・・良いだろう。ただし、この前みたいに手加減はしないぞ」

狼鬼は腰から太刀を引き抜いた。

そして両手をだらり、と下げ猫背になった。

太刀の刃が地面に触れる程度にまで手を下げている。

まったく分からない構えだ。

見た事もない。

「それが貴方の構え?素人ね」

こんな構えをするのは素人の証拠だ、と由利は言った。

「口うるさい女だ。怖いのか?」

狼鬼は挑発的に笑った。

由利は口元を引き締めて、上段の構えを取った。

上段は「火の構え」と言われている。

頭上以外は無防備であるため危険性は高い。

しかし、極めて攻撃力が高い構えだ。

一撃必殺を狙う時や攻撃こそ最強の防御と謳う者達がよく構える。

柳生新陰流は「後手の先」というカウンター攻撃を得意としている。

相手が打ち込んだのを裁いて斬るのだ。

これが新陰流の極意とも言えるし、最強と謳われる由来でもある。

しかし、由利は江戸柳生の新陰流ではない。

宗家の尾張柳生で学んでいる。

尾張柳生は家禄こそ江戸柳生に比べれば劣る。

だが剣の腕では上だ。

新陰流の開祖、石舟斎が作り上げた新陰流。

尾張ではそれを更に改良して攻撃性を高めた。

由利は本場で学んだのだ。

だからこそ攻撃は最大の防御を旨としている。

「火の構え、か。尾張柳生らしい構えだ」

狼鬼は先ほどと同じ構えを取ったままだ。

「・・・行くわよ」

由利が距離を縮めて狼鬼の頭上を狙い振り降ろした。

「頭上、か。甘いな」

狼鬼は笑みを浮かべた。

そして蒼い瞳を凍らせたように冷たい殺気を放った。

ギュウン!!

旋風のように素早い動作で太刀が動き、由利の孫六を跳ね飛ばした。

そして左手で由利の襟首を掴むと片手だけの背負い投げを喰らわした。

「がっはっ・・・・・・・!!」

地面に叩きつけられた由利は、気絶した。

「これからは受け身の練習もするんだな。お嬢ちゃん」

狼鬼は太刀を鞘に収めた。

そして水月達の方へと戻り、浅草廻りを再開した。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す