侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 9
苦しい言い訳だったが、瑞穂は信じてくれた。
「そうですか。それじゃ、直ぐに朝食を食べましょう」
理緒が既に作っている、と瑞穂は続けた。
「分かったわ」
静は瑞穂を伴い、部屋を出た。
歩いている最中、静は下着越しに棒が動くので、耐えるのに必死であった。
居間に行くと既に理緒が朝食を並べて待っていた。
「母上、大丈夫ですか?」
理緒も心配そうに聞いてくる。
「大丈夫よ」
静は、安心させるように答えた。
理緒は安堵の息を吐いた。
その後、朝食を取った静は、外出する旨を伝えた。
「ちょっと近所の寄り合いに出かけて来るわ」
瑞穂と理緒は頷いて、静を送り出した。
家を出た静だが、行く所は寄り合い席ではなかった。
行く場所は・・・・・・・・・西洋店だ。
江戸市内には幾つか西洋の品を売る店がある。
しかし大半が藩か幕府御用達だ。
戊辰の戦が終わり、公武合体を唱える幕府側が勝ち、幕府は存続された。
だが、先の天皇が急きょ死んでしまい、幼い子が天皇に
なった。
幕府は、この幼い天皇を利用して、外国を排斥するのではなく対等な関係を持つ事にした。
徳川から松平に将軍が代わり、その気運が強くなり出したのだ。
松平は、先ずロシアと対等な同盟を結ぶ事にした。
数百年前にロシアから同盟を結ぼうと申し込まれたが、幕府は断った。
しかし、他の国は日本を軽んじている。
これでは、いつ攻撃されるか分からないと考えた結果である。
ロシアは先の事を水に流すと言ってくれた。
そして同盟を結ぶ事に成功した。
間もなくアメリカも対等の条約を結ぼうと申し込んできたので、これも結んだ。
隠して日露米の3同盟が完成した。
これにより日本にも西洋の文化などが来て、逆に外国に輸出された。
これで富を稼げるようになった幕府と藩達は喜び、その蜜を啜ろうとする商人達も現れた。
彼等は、こぞって藩や幕府御用達の商店になろうとした。
御用達になれば、その国の商いを牛耳られるからだ。
熾烈な争いを繰り広げて、御用達商店になった商店は良い。
しかし、市民から言わせれば、自分達だけ西洋の物を取り扱いぼろ儲けされるのは面白くない。
その為、民間でも西洋の物を売る商店が現れた。