侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 62
水月は、それを見て長い年月を生きているだけあって出会いも別れもあるのだろうと思った。
後に静と出会う事を水月は知らないが。
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静は食後の余韻を自室で過ごしていた。
その手には西洋の杯がある。
中身は白くて、とろみと弾力があり、味が濃い飲物だ。
それを一口で飲み干した。
喉を伝い下に落ちる白い液。
「自分の体液って美味しい物ね」
これなら何杯でも飲めると思った。
『主の住む世界は人が賑わっており良い場所だな』
「そう言えば、貴方の住んでいた場所は戦続きだったのよね?」
『あぁ。毎日毎日、小さなイザコザで大きな戦になった。お陰で血を見ない日は無かった』
もう嫌だ、とマーズは言った。
「確か、フェシリアの住んでいる所も戦に出るとか言っていたわね」
我等は農作期は住むが、それが過ぎれば旅に出て戦をする。
血を求めて歩いている、と前にフェシリアは言った事がある。
『あの一族は恐らく傭兵のような物だ。猛りは性と力を意味する。我が居た世界でもそうだった』
「性は分かるけど、力は?」
『猛りには子を宿す力がある。だから、力なのだ』
マーズの説明を聞いて静はそんな物かと思った。
暫く余韻に浸っていると理緒が風呂が開いた、と伝えてきたので風呂に入る事にした。
風呂に入っている間、静はマーズと話をしていた。
『夜も賑やかで行ってみたい』
「あっちは遊楽街よ」
『何だ、女を抱く所か』
「そうよ。だから、私には行けないわ」
『なるほど。では、明日は昼間の街を案内してくれ』
「分かったわ。ちょうど行く所もあるから」
静はマーズの要望に答え、濡れた髪を風呂から出した。
寝室に戻る静。
寝巻に着替えて布団に入ろうとしたが、汚れていた事に気付いた。
「そう言えば、洗濯しなかったわね」
『当然だな。どうするのだ?』
「娘たちの所に行くのも気が引けるわ」
瑞穂の隣室は理緒だ。
きっと行けば、自分を求めて来て知られるに違いない。
まぁ、あの二人は互いを慰めあっている。
それを考えれば別に問題なのだが、やっているかもしれないと思うと二の足を踏んでしまう。
『では、どうするのだ?我は主の精神で寝れるから問題ないが』
「まだ眠くないし、外出でもしましょう」
『何処にだ?』
「決めてないわ。言うなれば、夜の御散歩よ」
静はある事を思い付いて含み笑いを浮かべた。
マーズは何やら面白い事になりそうだ、と笑い声を頭の中で上げた。