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侍物語〜サムライストーリー〜 第二部
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侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 53

「それとも連れの女の顔をズタズタにされたい?」

「君のような可愛い子に恐ろしい事が出来るのかな?」

「・・・立ち会いなさい。さもないと、ここで貴方を斬るわ」

「分かったよ。やれば良いんだろ?」

男は肩を竦めながら頷いた。

「狼鬼様・・・・・・・・」

女が男の名を呼び、肩を掴んだ。

「心配するな。水月。ちょっと遊ぶだけだ」

男は安心させるように笑った。

それが由利には癇に障った。


人気が少ない場所に移動した3人。

由利は腰の刀を抜いた。

そして脇に構える八双の型を取った。

大人数でも戦える構えで、実戦では下段と同じく重宝される構えだ。

狼鬼と言った男は扇子を取った。

「さぁ、始めようか?」

由利は無言で攻撃を開始した。

柳生新陰流の教えでは「待ちの太刀」と言われる受け身の剣だ。

しかし、これは江戸柳生の教えであり本家である尾張柳生では攻撃性の高い教えを説いている。

由利の方は尾張柳生の教えを取っている。

距離を詰めて、八双から上段に構え直して上から振り降ろした。

それを狼鬼は扇子で受け止めて、裁いた。

だが、由利は直ぐに態勢を整えて突きを繰り出した。

本来ならば狼鬼の心臓を貫く筈だった白刃だったが・・・・・・・

「中々の突きだが、目を瞑っても避けられるな」

男は白刃の上に足を乗せて笑った。

由利は直ぐに行動を取ろうとしたが、狼鬼の扇子が首を捕えた。

「これが刀なら、首を跳ばされていたよ」

屈託のない笑みで喋る狼鬼。

由利は、男の動きに信じられない物を見た顔をした。

白刃の上に立つなど常人では有り得ない。

それに自分の太刀筋なら殺せると思っていた。

将軍の前でやる御前試合でも引けを取らなかった。

それなのに、あっさりと交わされた。

信じられない。

それが今の心だった。

「信じられない、という顔だね。だけど、現実だ」

男は扇子を戻すと、白刃から降りた。

そして背を向けた。

「これに懲りたら、自分より強い者に喧嘩を売るのは止めておくんだね」

狼鬼は女を連れて立ち去った。

しかし、立ち止った。

「狼鬼・・・・名は、覚えて置くぞ」

「好きにしな。それと俺の泊っている宿は“狸”という宿だ。何かあれば来な」

そう言って今度こそ立ち去った。

残された由利は、負かされた事に対して憤りを感じていた。

しかし、同時に強い者と出会えたという歓喜に満ち溢れた。
















「狼鬼様。幾ら何でもあんな女の喧嘩を買うなんて有り得ないですよ」

帰り道、水月は狼鬼に怒っていた。

今日は狼鬼から、一緒に別の世界に出掛けようと言われた。

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