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侍物語〜サムライストーリー〜 第二部
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侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 28


一匹ずつ片付ける余裕はない。

何より血の臭いを嗅ぎ付けて、新たな野犬が来る可能性が高い。

野犬達は少しずつ静との距離を縮めて来た。

橋を背にしているから、逃げる事は敵わない。

だが、一つだけ道がある。

『・・・川に飛び込むしかないわね』

もう直ぐ冬になる川は寒い。

飛び込んでも、運が悪ければ溺れるか寒さで死んでしまう。

だが、静は川に飛び込む道を選んだ。

背を向けて川に飛び込む静。

野犬達は、それを見て獲物に逃げられたと遠吠えを上げて新たな獲物を探しに闇の中へと消えた。

川に飛び込んだ静は、懐剣を口に銜えて急ぎ着物を脱いだ。

着物は水に浸かると一気に重くなり、泳ぐ事は余程の鍛錬をした者でない限り不可能だからだ。

亡き父からは寒中水泳の心得を教えられた静だからこそ、ここまで冷静に出来るのだ。

何も受けていない者なら、既に寒さと重さで死んでいる所だ。

着物を脱いで下着姿になった静は水の中から顔を出した。

「はー、はー、はー」

一気に息を吸いながら、急いで岸へと泳ぐ。

岸まで辿り着き、何とか這い上がった。

寒さで身も凍る思いだ。

家の方角は、ここからかなりある。

つまり、結構な距離まで流されたと言う事だ。

『何とか家まで辿り着かないと』

静は下着姿のまま立ち上がった。

震える身体を抱き締めて、首の懐に巻き付けた風呂敷を見た。

鬼門堂の男が渡した風呂敷で防水性があり服などが濡れないのだ。

それを思い出して風呂敷を解いて、ボンテージを取り出した。

下着は濡れているので、着物と一緒に包んだ。

ボンテージの色は黒で、臍の辺りから黒い紐で左右に蝶々結びにされていた。

下はガーターベルトを穿いた。

肌が露出して寒いが、下着姿の時よりは遥かにマシだった。
一緒に渡されたハイヒールと呼ばれる靴を履いた。

懐剣はガーターベルトに挟み、静は家に向かい歩きだした。

寒いせいかどうにも身体が重く、思う様に動けない。

『少し走れば温まるかも』

止めれば一気に寒くなるが、家へと着けば後は風呂に入れば良いだけだ。

そう結論付け、静は走り出した。

濡れた髪から水滴が跳ぶ。

構わず静は走り続けた。

ハイヒールは一見、走り難そうに見えたが問題なかった。

走りながら身体が火照って来た事を静は感じた。

『このまま家へと着けば問題ないわね』

頭の中で、そう思った。
しかし、前方から提灯の明かりが見えたので、慌てて隠れた。

隙間から見れば、夜回りする同心たちだった。

別に見られても良いのだが、こんな格好では恥ずかしい。

その為、やり過ごして再び走り出した。

しかし、また提灯が見える。

それを何度も繰り返すと次第にまた身体が寒くなった。

どうにかならないものかと考えて、屋根伝いに移動すれば気付かれないと考えた。

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