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南の島の大王は…
官能リレー小説 - その他

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南の島の大王は… 2

「王宮から脱出された後、行方が分からなくなってしまい、もしや敵の手に捕らえられたのではないかと心配しておりました。お会い出来て本当に良かった!もうご安心ください。ここからは我々がお守りいたします。申し遅れましたが私はマダタスカル国軍少佐マリア・ルルーと申します。とりあえず軍司令部へ…」
どうやらこの女士官は俺の事をこの国の王様だと勘違いしているらしい。
「あ…ああ、助かったよ。ありがとう、えっと…ルルー少佐?」
俺は調子を合わせて王様のフリをした。そうすれば安全な所へ連れて行ってもらえると思ったからだ。後でバレたら怒られるだろうが、まずは身の安全が大事だ。
俺達はジープに乗って軍司令部に向かった。車内では銃を持った兵士が俺の両側に座り、かなり狭かった。
「なぁ、一体どうしてこんな事になっちまったんだ…?」
車中、俺はルルーとかいう女軍人に尋ねた。
「突然の事でしたから、王様がご存知無いのも無理はありません…。タタタ族です。我々ナナナ族の統治に不満を抱いたタタタ族の過激派がクーデターを画策し、王宮、議会議事堂、国営放送局などを占拠したのです」
「そうだったのか…」

その昔、この国はいくつもの部族が、時には争いながらも、それぞれのテリトリー(領土)を守って共存していた。何千年もの間、そうして来たのだ。
ところが、そこへヨーロッパ人が進出して来た。まずポルトガルの植民地にされ、次にスペインの植民地、次にドイツ、その次にフランスの植民地となり、最後にイギリスの植民地となって、第二次世界大戦後に独立した。
マダタスカル人は実に500年ぶりに自分達の島を取り戻したのである。
しかし、ヨーロッパという支配者がいなくなると、島では再び部族間の対立が始まってしまった。
特に最も人口の多いタタタ族は、現在マダタスカル王国の支配者層を成しているナナナ族を目の仇にしていた。
ヨーロッパ列強は巧妙だった。最大勢力のタタタ族ではなく、圧倒的に数の少ないナナナ族を総督府の下で働く下級役人や兵士として採用したのだ。
島に住む白人は少ない。原住民の手を借りずには植民地支配など出来なかった。
だが自分達の下で使うには、原住民に学識を身に付けさせ、武器の使い方や戦術を覚えさせなければならない。
原住民にそういう知識を与えるのには大変な危険が伴う。反乱を起こされる可能性があるからだ。
だが数が少なければ反乱を起こされても鎮圧出来る。だから最大勢力のタタタ族ではなく、圧倒的に数の少ないナナナ族が選ばれたのだ。
結果、独立後のマダタスカルの政治、軍事はナナナ族が独占する事となったのである。

そんな歴史もあって、ナナナ族とタタタ族の対立は現代まで続いているのである。
だが、前の王様の時代にタタタ族を始めとする諸部族にも学問や就業の門戸が開放され始め、ここ20〜30年は小競り合いを除けば大きな紛争も無く、平和が続いていた。
前の王様は偉かった。ナナナ族が富と権力を独占する今の状態は国として非常に良くないと考え、各部族の集落に学校や病院を建て、農業・漁業の改革や工業・商業の促進に努めた。彼はマダタスカル王国を近代国家として生まれ変わらせたのである。
それに対して今の王様はてんでダメだ。無理がたたって父王が早く世を去り、彼は若くして王位に就いた。だが、小さな頃から甘やかされて苦労を知らずに育ち、大学時代は外国に留学して学んだそうだが「一体何を身に付けて来たんだ?」と突っ込みたくなるくらいの馬鹿だった。馬鹿というか不真面目なのかも知れない。それだけならまだ救いようもあるものの、王位に就いてからは、自分の意見に反対する者を徹底的に遠ざけ、周りをイエスマンだけで固め、独裁的に振る舞い出した。

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