無人島生活 11
一回優しく搾りだして貰うだけでも、心と体から余計なものが抜けていったような清浄感があって、過剰な精力が呼ぶ性欲も、ひとまず落ち着いた。
「ありがとな、トレーシー。じゃ、いってくるよ」
「待ってるわ。あなた♪」
ニコッと優しく微笑んで、俺を送り出してくれた。
トレーシーのおかげか、この日は豊漁でみんなが喜んでくれた。
そして、日々俺は魚を捕ったりして、みんなのお腹が少しずつ大きくなって…
「ほら、もう少しだ、出てきたぞ!!」
「ううっ、うーっ!!」
「ママ、がんばって!!」
漁に出る準備をしていたら、トレーシーが産気づいた。
俺は漁を中止して、お産を助けている所だ。他の娘達も身重の身で手助けしてくれている。
トレーシーの娘のキャサリンは、母の手を握り。
美佳達経産婦達が、見様見真似であれこれ準備してくれた。
そして…
「ほぎゃっ、ほぎゃっ、ほぎゃっ!」
「やった、生まれたぞ!元気な男の子だ!俺達の子だ!」
産湯をつかわせて、赤ちゃんを見せてあげると、トレーシーは感極まって眼に嬉し涙を浮かべながら、息子を見つめていた。
「この子が…私達の…」
「そうだ、俺達の子だ」
俺もいよいよ父親になったんだな…しみじみとそう思う。
無事に生まれてくれて、本当にありがとう。
「あっ!あれを見て!」
誰かの声に反応するように視線を向けるとそこには―――巨大な赤いドラゴンがいた。
『グルルル……』
喉の奥からは炎がちらほらと見え隠れしており、明らかにこちらを警戒していることがわかる。
出産の喜びから一転、みんなが恐怖している。それに逃げ出せと言っても出産直後のトレーシーがいては、逃げられまい。だから、俺は動いた。
不思議なほど、恐怖を感じない。覚悟か決まったというのは、こういう事なのだろうかと思う。
「落ち着いて。なあに。何とかするさ」
「でも…」
「俺を信じてくれ」
俺がみんなを見回すと、少し落ち着いてくれたようだ。キャサリンが産まれたての弟を抱き、胎盤を出し終えたばかりのトレーシーを、悠里と真由香が支えて下がっていく。
他のみんなも、身重ながらもパニックにならずゆっくりと下がっていってくれた。
俺は赤いドラゴンの様子を見つめていた。冷静でいられたから、ドラゴンの様子を落ち着いて観察できた。
俺はこの時の事を思い出すと、よくこれだけ冷静に振舞えたと自分が信じられない思いになる。