強制結婚制度 ‐オチコボレの挽歌‐ 3
毛の色が茶色だなんてまるで犬猫と一緒じゃないかね?
ましてガングロなどは人間未満の動物だぜ。
俺は心の中で日本を蝕む甘ったれた女文化に対して、ひとしきり苦言を呈しつつ、北条祥子に最大限の賛辞を送りながら教室の自分の席に座る。
だが北条祥子への賛辞は早くも間違いかもしれなかった。
目を疑った。
昨日までは長かった彼女の髪がバッサリ短くなっているじゃないか!?
彼女がクラスへ入っていくと案の定一騒動になった。
そりゃぁクラスのマドンナが髪をばっさり…って何かあったと思うだろ?
だけどさりとて聞けるような雰囲気じゃない。
顔面蒼白という言葉がまさに当てはまるほどやばそうだった。…ってかよく学校には来たよなぁ。
北条祥子のまわりでヒソヒソと話し合い…要は誰が『どうしたの?』と聞くか…が行われているが、それさえにも彼女は気付くことはない。
このまま重い空気のなかHRが始まるのかと思いきや、またもやハイテンション娘、理子がぶ打ち壊してくれた。
「おっはよぉーっ!!−って、祥子ぉ!?髪どうしたのよぉ!」
その瞬間空気が凍ったのは言うまでもない。
さきほどより体感温度が10度は下がった教室。
理子は空気が読めていないのかキョトンと「?」を頭に浮かべている。
クラスの皆が注目するなか、ギギギという音が聞こえてきそうなほどぎこちなく北条祥子が理子に振り返った。
「ん?どしたの?」
あくまで空気を読めない(読んでないのか?)理子に北条祥子が一枚の紙切れを差し出す。
ん?あれは…ここ最近めっぽう見慣れた…
「えと…ふてきかく…北条祥子様。あなたは強制結婚制度の適応範囲から外れているため(低卵子排出症)に、同制度から対象外となります…ん?」
理子が書類の頭にあった文を読む。やっぱりあれは俺や香織に来たのと同じ、強制結婚制度不適格書類っ!!
まさか彼女までそうなんて…